日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-63S
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一般演題 ポスター
ヒトiPS細胞由来脳毛細血管内皮細胞を用いた薬物透過性の予測
*佐藤 寛之中井 佳穂伊藤 輝池田 ゆうり坡下 真大岩尾 岳洋松永 民秀
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抄録

【目的】

 血液脳関門(BBB)は血液と脳実質間における物質の輸送を制御しているため、中枢神経毒性の発現において重要な機構である。そのため、中枢神経系に対する毒性評価においてはヒト生体内と同様の機能を有するBBB in vitroモデルが重要である。しかし、ヒトの初代培養細胞や不死化細胞を用いた既存のBBBモデルでは、希少性やBBBの機能の喪失が問題となっている。これらの問題を解決するため、簡便に作製可能で強固なタイトジャンクション機能を有するヒトiPS細胞由来脳毛細血管内皮細胞(iBMEC)が開発された。一方、その他のBBBの機能の評価は十分に行われておらず、iBMECsにおける薬物の透過性をin vivoモデルと比較した報告は非常に少ない。そこで、本研究ではiBMECsとげっ歯類またはヒトにおける薬物透過性を比較することで、iBMECのBBB機能を評価することを目的とする。

【方法】

 生体内BBBに高発現しているタイトジャンクションやトランスポーターなどの遺伝子とタンパク質の発現をRT-qPCR及び免疫蛍光染色法で解析した。薬物の見かけの膜透過係数(Papp)は透過性試験により算出した。得られたPappin vivo モデルと比較し相関値を算出した。

【結果】

 iBMECは強固なタイトジャンクションを有し、排出トランスポーターBCRPはヒトBMECと比較して高い発現を示した。iBMECにおける薬物のPappはマウスにおけるPappと高い相関が認められ、ヒトにおける中枢移行性との比較においても高い相関が認められた。

【考察】

 iBMECは強固なバリア機能をもつことに加え、iBMECとin vivoにおける薬物透過性には高い相関があることが本研究により示された。したがって、iBMECにおける医薬品の透過は生体内を反映しており、薬物透過性の予測や安全性評価に応用できると考えられる。

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