主催: 日本毒性学会
会議名: 第51回日本毒性学会学術年会
開催日: 2024/07/03 - 2024/07/05
【目的】近年、SDGsにも取り上げられているように、環境問題として、マイクロプラスチック(MPs)、ナノプラスチック(NPs)が注目されている。MPsとは、環境中に存在する5 mm以下のプラスチック粒子であり、食塩や飲料水、ヒトの血液や胎盤などから検出されており、ヒトはその曝露を避け得ない。また、NPsは1 µm以下のプラスチック微粒子であり、その微少さから未知なるハザードが危惧されている一方で、生体影響に関する知見は不足している。MPs・NPsの生体影響評価を進める上で、環境中の多種多様なMPs・NPsを用いた動態・ハザード解析が必要であるものの、現在入手できるサンプルは限られており、特にNPsはポリスチレンを用いた検討が殆どである。そこで本研究では、生産量が多いものの、ナノサイズの粒子の入手が困難なポリエチレン(PE)に着目し、将来的なNPsの動態解析に叶う、蛍光標識体の作製を試みた。
【方法・結果・考察】まず、蛍光観察(定性的評価)のみならず、含有される亜鉛を測定することで定量的評価が可能であるQdotを用いて緑色蛍光ナノPE(nPE)を作製した。先行研究のプロトコルに従い、キシレンにPE粒子を溶解し、110~115℃に温めたQdotを含有したDMSOに滴下し、粒子を形成させ、フィルター処理により粒子を回収した。作製したnPEを走査電子顕微鏡 (SEM) を用いて観察したところ、1 µm以下の微粒子が認められた。また、蛍光顕微鏡での観察により、微細な粒子からも蛍光が観察された。今後は、作製したnPEの粒度分布を測定するなど、物性情報を獲得するとともに、細胞内動態・体内動態の評価を試みる。さらに、異なる材質のNPsの作製、紫外線や波などの外的要因により表面改変が認められる環境中のNPsを模した劣化NPsの作製により、様々な物性のNPsのヒト健康影響評価を進める。