主催: 日本毒性学会
会議名: 第51回日本毒性学会学術年会
開催日: 2024/07/03 - 2024/07/05
【目的】慢性腎臓病 (CKD)は、様々合併症を伴うが、なかでも心不全は発症リスクが非常に高く重度CKD患者の主な死因となっている。しかしながら、CKD時の心不全を抑制する有効な治療法は確立されていない。一方、当研究室では、CKD時の心臓の炎症と線維化にマクロファージに高発現するGタンパク質型共役受容体68 (GPR68)が促進的に関与することを明らかにしている。そこで本研究では、CKD時の心不全を抑制する新たな心保護薬の開発を目的に、GPR68の機能を抑制する天然物由来化合物を探索した1。
【方法】
MDA-MB-231細胞を用いてGPR68活性を化学発光にて評価可能な細胞系を構築し、ハイスループットスクリーニング(HTS)を行った。5/6腎摘手術(5/6Nx)を施したICRマウスをCKDマウスとした。
【結果・考察】ヒトGPR68を阻害する化合物を探索するため、Nuclear factor of activated T cells応答配列ルシフェラーゼ活性を指標としたHTS、及び毒性試験を行い、GPR68の機能を抑制する生薬エキスを同定した。また、このエキスはGPR68高発現によるRAW264.7の炎症性サイトカインの産生上昇を有意に抑制した。そこで5/6Nxマウスにこのエキスを飲水投与した際の心臓病態について解析を行った結果、炎症性サイトカイン、心臓の線維化、血中ナトリウム利尿ペプチドのいずれ増加もエキス投与によって有意に抑制された。さらに、心臓の所見のみならず、体重減少や生存率低下についてもエキス投与により有意に改善された。加えて、このエキス中のアルカロイドから薬効成分を同定し、この成分がエキスと同様の抗炎症作用を有することも明らかにした。以上の結果から、本研究で同定した成分がCKDマウスの心臓におけるGPR68活性阻害を介して炎症および線維化を抑制することが示唆された。
1. Sakugawa M, et al., Trans Res., 2024