日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-100S
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一般演題 ポスター
深層学習による肝毒性回避を志向した新規医薬候補化合物の構造生成
*後藤 絃心松清 優樹岩田 通夫海東 和麻山西 芳裕
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抄録

創薬においてヒット化合物同定は重要な課題の一つである。効率化するための一つの方法として、自動で所望の活性を有する化合物の構造式を生成する構造生成器が研究されている。しかし、既往の構造生成器の多くは単一の標的分子や化学的性質しか考慮できない。近年では、包括的な細胞の応答を考慮できる遺伝子発現プロファイルを用いた構造生成器の研究が注目されている。しかし、既存の構造生成手法は化合物の安全性に関して考慮されていない。そのため、毒性回避により安全性も考慮した構造生成手法の構築が望まれている。本研究では遺伝子発現プロファイルに基づき、所望の標的活性と毒性回避を同時に考慮した医薬候補化合物の構造生成を行う手法を提案する。本手法では肝毒性を回避した構造生成に焦点を当てた。まず、肝毒性を示す化合物と示さない化合物の化合物応答遺伝子発現プロファイルを比較し、肝毒性特異的な遺伝子を抽出した。次に、肝毒性特異的な遺伝子を多く含むパスウェイを肝毒性関与パスウェイとし、肝毒性関与パスウェイ中の遺伝子を肝毒性関与遺伝子とした。次に、創薬標的摂動遺伝子発現プロファイル中に含まれている肝毒性関与遺伝子の発現パターンを打ち消すような遺伝子発現プロファイルを設計した。設計した遺伝子発現プロファイルを構造生成器に入力することで、標的タンパク質に対する新規医薬候補化合物を生成した。本研究ではケーススタディとしてがんの創薬標的であるキナーゼに応用し、その阻害剤候補となる新規化合物の構造を生成した。また、肝毒性を考慮して生成した化合物は、肝毒性を考慮せずに生成した化合物と比較して、承認薬との構造類似度はあまり変わらず、既知の肝毒性化合物との構造類似度は小さくなった。この結果から、提案手法にて肝毒性を考慮して生成した化合物は、期待できる薬効を保持しつつ、肝毒性を避けるような新規医薬品化合物を生成できた可能性が考えられる。

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