日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: S1-2
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シンポジウム1: 最新の実験動物の薬物代謝酵素知見からヒト酵素特徴の再確認へ
フラビン含有酸素添加酵素の触媒機能の動物種差
*清水 万紀子山崎 浩史
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抄録

フラビン含有酸素添加酵素 (FMO, EC 1.14.13.8) は、NADPH-依存的に窒素および硫黄原子を含む医薬品および生体内物質の酸化(酸素添加)を触媒する第一相代謝酵素である。ヒトFMO分子種は、アミノ酸の相同性に基づきFMO1-5が同定されている。FMO3はヒト成人肝に、FMO1はヒト成人腎および胎児肝に発現している。ヒトFMO3は疾患誘因遺伝子として作用し、その機能低下はトリメチルアミン尿症を引き起こす。非ヒト霊長類サルの肝臓および腎臓のFMO3およびFMO1の発現はヒトに類似しているが、イヌおよびブタでは肝臓にもFMO1が発現している。FMOの酸化反応はシトクロムP450と同様に分子状酸素を基質に添加するが、その至適反応条件は高pHであり、NADPH非存在下で熱に対して不安定である点が特徴となる。FMOの典型的基質であるベンジダミンN-酸化酵素活性は、ヒト、非ヒト霊長類サルおよびマーモセットならびにイヌに比較して、ブタ肝ミクロゾームで高値を示した。FMO1および3の酵素機能に着目すると、ブタではFMO1の酵素機能が高値を示した。

雄性マウスではFMO3が発現していないことが知られている。マウスにFMO3の典型的基質を投与した場合、FMO3由来の血中代謝物濃度はヒト肝細胞移植マウスに比較して低値を示すことから、医薬品体内動態の検討には適切な動物種を選択する必要があると推察された。ヒト肝移植マウスを用いて2種のFMO3基質の同時投与後の体内動態を検討したところ、相互の影響は限定的なものと推察された。以上の知見は、FMOが代謝消失に関与する医薬品開発の基盤情報としての活用が期待される。

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