日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: S1-3
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シンポジウム1: 最新の実験動物の薬物代謝酵素知見からヒト酵素特徴の再確認へ
薬物代謝における動物種差:ヒトにおける医薬品の代謝・毒性の予測モデルとしてのヒト肝キメラマウス
*上原 正太郎山崎 浩史末水 洋志
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抄録

ヒト肝キメラマウスは、薬物代謝や毒性研究のための魅力的な実験動物である。ヒト肝キメラマウスの肝臓には、チトクロムP450(P450)、UDP-グルクロン酸転移酵素、アルデヒドオキシダーゼなど複数のヒト薬物代謝酵素が発現しているが、その薬物代謝活性の解析は不十分である。本研究では、ヒト肝キメラマウスの肝薬物代謝酵素活性を明らかにするために、肝ミクロゾーム等を用いて肝薬物代謝酵素活性を測定した。ヒトとヒト肝キメラマウスの肝ミクロゾームにおけるクマリン7-水酸化活性(P450 2A酵素活性)およびフルルビプロフェン4'-水酸化活性(P450 2C9酵素活性)は類似していた。一方、P450 2D酵素が触媒するプロパフェノン水酸化反応の位置選択性はヒトとマウスで異なるが、キメラマウス肝ミクロゾームはマウス肝ミクロゾームと同様にプロパフェノン4'-水酸化を優先的に触媒した。また、キメラマウス肝ミクロゾームによるヒト特有のオランザピンN10-グルクロン酸化酵素活性(グルクロン酸抱合酵素UGT1A4酵素活性)が検出された。さらに、c-Met チロシンキナーゼ阻害剤SGX523は臨床試験で予期せぬ腎毒性が認められたが、その原因と考えられる難溶性代謝物はキメラマウス肝サイトゾルにより生成された。興味深いことに、SGX523を反復経口投与したヒト肝キメラマウスの腎臓では、腎尿細管への異物の蓄積と炎症性細胞の浸潤が認められた。総じて、肝薬物代謝酵素活性はヒトとヒト肝キメラマウスの間で類似している。ヒト肝キメラマウスを医薬品開発への有効活用には、ヒトとキメラマウスの肝薬物代謝能の相同性・相違性を理解することが重要である。

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