主催: 日本毒性学会
会議名: 第51回日本毒性学会学術年会
開催日: 2024/07/03 - 2024/07/05
プログラム細胞死は、回復不能な傷害を受けた細胞を体内から除去するための重要なシステムであり、シグナル伝達分子による厳密な制御を必要とする。最近、多様なストレスがその状況に応じてアポトーシス、ネクロプトーシス、ピロトーシス、フェロトーシス、パータナトスなどの様々な形態のプログラム細胞死を誘発することが明らかになってきた。 特に「パータナトス」は、酸化ストレスなどによる細胞傷害時に働くストレス応答シグナル分子PARP-1(poly (ADP-ribose) polymerase-1)の活性化に依存する新しいタイプのプログラム細胞死として見出され、神経変性疾患や癌などの様々な疾患との関連で注目を集めている。しかし、パータナトスの詳細な誘導・制御機構については良く分かっていない。我々は、パータナトスの誘導が、多機能分子p62を介したALIS(aggresome-like induced structures)の形成やその流動性(固さ)に依存していることを見出した。ALISはLLPS(liquid-liquid phase separation; 液−液相分離)によって形成される液滴様の構造体であり、シグナル伝達のhubとして機能する。p62は、細胞傷害の指標としてのユビキチン化タンパク質を認識し、また分子内システイン残基の酸化修飾を介して酸化ストレスなどの多様なストレスに対するセンサー分子として機能することも判明した。さらに我々は、PARP-1によるポリADPリボシル化やp62のリン酸化が、ALISの形成とパータナトスの誘導を促進することも明らかにしており、本シンポジウムでは、ユビキチン化やADPリボシル化など幾つかの翻訳後修飾のバランスによるALIS形成とパータナトス誘導の制御メカニズムと、パータナトスと多様な疾患との関係について議論したい。