主催: 日本毒性学会
会議名: 第51回日本毒性学会学術年会
開催日: 2024/07/03 - 2024/07/05
マイクロ流体デバイスを用いた細胞培養は、平らな培養皿の静的な環境で培養するのに比べて、三次元構造と力学的刺激を与えられるために、体内に近い環境を作り出せる。そこで創薬や疾患治療に役立つ血管モデルの実現を目指して、血管で起きている現象を出来るだけ正確に模擬できる細胞培養マイクロデバイスの構築を試みている。これまでに、血流を模擬した力学的刺激を与えるシリコーンゴムのデバイスや、ヒト初代細胞を用いて3次元の血管の構築するためのゼラチン製デバイスを開発してきた。
これらのデバイスを使った応用としては、細胞を伸展させるデバイスでは、動脈が塞がって血圧が上昇する難病である肺高血圧症のモデルを開発した。このデバイスは力学的刺激で悪化する病態の治療薬開発に貢献できる可能性がある。これは化学刺激のみで構築できない生命現象について、力学的刺激を与えることで生体外に構築する試みといえる。ゼラチンデバイスを用いた応用研究としては、デバイス内に血管網と口腔癌由来の細胞と共培養し、血管と間質を持つ3D癌モデルの構築も検討し、がんの放射線治療効果の検証を行っている。当日はそれらの結果を示しながら、新しい培養法によって拓ける研究の可能性について議論したい。