主催: 日本毒性学会
会議名: 第51回日本毒性学会学術年会
開催日: 2024/07/03 - 2024/07/05
傷害や炎症時によって、脳のグリア細胞の1種であるアストロサイトは遺伝子発現レベル及び形態学的レベルで劇的な変化を示して反応性アストロサイトとなる。反応性アストロサイトはCa2+シグナルの異常化を伴う機能変化を示して脳病態を増悪化すると考えられている。Ca2+シグナルの異常化を誘導する分子の1つにP2Y1受容体がある。P2Y1受容体は、てんかん、アルツハイマー病、脳卒中などの病態での反応性アストロサイトにおいて共通して強発現することが知られている。しかし、その機能的意義は不明であり、P2Y1受容体の下流において共通した分子メカニズムがあるのかも不明である。この問題を解明するため、マウスのアストロサイトにおいてP2Y1受容体を選択的に過剰発現させたところ、これによって神経過興奮が生じる所見を見出した。その細胞メカニズムを、Ca2+イメージング、RNA-seq、電気生理学、免疫組織染色にて解析したところ、アストロサイトにおけるP2Y1受容体の過剰発現はIGFBP2の発現上昇を介して神経興奮性を増大させることを見出した。IGFBP2は分泌性の興奮性分子として働き、てんかんモデル及び脳卒中モデルの反応性アストロサイトにおいてP2Y1受容体と共に発現増加することから、神経過興奮を伴う病態に密接に寄与する可能性が示された。