日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: S29-4
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シンポジウム29: 毒性研究者によるPDE/OEL 算出―医薬品の品質管理と労働者の安全性担保の ために-
毒性情報が不足している場合のPDE・OEL設定
*林 多恵
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抄録

医薬品のPDE・OELは、評価対象物質の臨床試験及び非臨床試験の情報に基づきPOD (Point of Departure) を決定し、不確実性を考慮することにより設定される。しかし、開発初期段階の医薬品、合成中間体、医薬品原料等は、PDE・OEL設定に必要となる毒性情報が得られない場合が少なくない。そのような場合は以下のアプローチが考えられる。

【毒性情報が全くない場合】

TTC(毒性学的懸念の閾値)アプローチを適応する方法が用いられており、変異原性物質に関してはTTC (1.5μg/day) がICH M7ガイドラインで定められている。非発がん性物質のTTCについては、食品影響評価で開発されたものはあるが、医薬品の評価において定められた値がないのが現状である。TTCアプローチは一般的に保守的なアプローチとなるため、類似構造の毒性情報等が利用できる場合は、リードアクロスアプローチを用いた評価が適切だと考えられる。

【PDE・OELを設定する経路で実施された毒性試験情報がない場合】

経路間におけるバイオアベイラビリティの差を考慮した経路間外挿について検討する必要がある。OEL設定については、一般的に吸入経路による評価が行われることが多いが、当該経路の毒性情報が得られないことが多く、経肺吸収率等を考慮した経路間外挿を検討する必要がある。なお、食品等の評価で検討されてきた非発がん性物質のTTCは、経口経路で投与される試験情報に基づき開発されたものであり、吸入経路や静脈内投与される物質の評価に直接適用することができないため、別途経路間外挿の検討が必要である。

本講演では、毒性情報不足の場合のPDE・OEL設定において参考となる、非発がん性物質のTTCに関する検討や一般化学物質の評価において取り入れられているリードアクロスに基づく毒性の類推、TTCの経路間外挿に関する検討について紹介する。

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