主催: 日本毒性学会
会議名: 第51回日本毒性学会学術年会
開催日: 2024/07/03 - 2024/07/05
抗がん剤の非臨床毒性試験は、非がん領域の医薬品と同様に、標的器官、曝露反応関係、及び回復性といったプロファイルを明らかにすることを目的として実施される。しかしながら、非がん領域の薬剤とは異なり、非臨床薬効量やヒトの予測薬効量と毒性用量との全身曝露マージンが無い、あるいはネガティブマージンであることは決して珍しくない。それは即ち、その毒性の回復性が、臨床開発及びリスク評価の観点からより重要になることを意味する。
病理組織学的検査において回復性の有無を判断する際には、まず投与期間終了時にみられた病変の程度や病期を正しく理解し、適切な用語や組織学的グレードを用いて表現することが重要である。その上で回復期間終了時に観察された変化の特性、すなわち投与期間終了以降に速やかに回復したのか、回復期の途中か、あるいはまったく回復していないかを見極めていく。仮に回復途中の病変と判断された場合、細胞のターンオーバーを考慮して完全回復に至るまでの日数を推測することもあり、一連の思考プロセスには病理学的な知識のみならず、組織学や生理学の知識も必要となる。
本シンポジウムでは、特に低分子抗がん剤に着目し、病変が誘発されることの多い消化管、リンパ造血器、精巣といった臓器に認められる病変、及びその回復性について、病理組織像を中心に紹介する。