日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: S31-2
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シンポジウム31: 短寿命活性種の毒性と機能性
超硫黄分子オミクス解析による機能性食品成分の探索
*笠松 真吾居原 秀
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抄録

硫黄は全生物にとって必須の元素である。古代エジプト人は、ニンニクやタマネギが健康促進作用を持つことを把握し、日々の生活にこれらの野菜を活用していたとされる。ニンニクやタマネギなどのネギ属や、ブロッコリーやキャベツなどのアブラナ科の植物は硫黄成分を豊富に含み、日常的に摂取することで、心血管疾患やがん、神経変性疾患などのさまざまな疾病の予防につながることが科学的に明らかにされている。しかし、食品由来の硫黄成分がヒト生体内でどのように代謝され、いかにして人間の健康と病気の予防に寄与しているのかの全容は不明な点が多く残されている。

近年、硫黄代謝物の新たな定量技術の開発を端緒に、“超硫黄分子”と総称される、硫黄原子が直鎖状に複数連結した構造を有する分子が、原核生物からヒトを含む真核生物まで幅広く種横断的に保存された機構によって生体内で生成されることがわかった。超硫黄分子は、そのユニークな化学特性を介して、強力なラジカル消去因子として機能し、レドックスシグナル制御において重要な役割を果たしていることが明らかにされてきている。一方で、超硫黄分子は、その高い反応性ゆえに試料調製過程で容易に分解、酸化してしまうため、再現性の高い解析結果を得るためには注意が必要である。本発表では、超硫黄分子のユニークな化学特性や解析時に配慮すべき点などを概説しながら、我々が確立した超硫黄分子オミクス解析技術について紹介し、超硫黄分子を基軸とした機能性食品成分の探索の可能性や、今後取り組むべき課題について議論したい。

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