主催: 日本毒性学会
会議名: 第51回日本毒性学会学術年会
開催日: 2024/07/03 - 2024/07/05
我々が日々口にする食品には様々な成分が含まれており、そのそれぞれが特徴的な活性を有すると考えられる。健康増進に寄与すると経験的に言われている食品が多数存在するものの、その機能性発揮に寄与する実行分子や詳細な分子メカニズムについては未だ不明な点が多く残されている。発表者はこれまで特に食品中に含まれる低分子化合物に着目し、生体のタンパク質と低分子食品成分の相互作用を介して発揮される食品成分の炎症抑制機構について解析を行ってきた。本発表ではターメリック由来のクルクミンによる炎症抑制メカニズムについて紹介する。
クルクミンは、ターメリックの根に含まれる黄色を呈するポリフェノール化合物であり、東洋では古くから伝統治療において炎症の抑制に有用な天然物由来化合物として使用されてきた。本研究ではクルクミンの酸化的変換に着目し、親電子性のクルクミン酸化物のタンパク質修飾により発揮される炎症抑制機構について解析を行ってきた。生体条件下において自動酸化により形成されるクルクミン酸化物の有する抗炎症作用を評価した結果、クルクミンの酸化に伴って炎症抑制活性の増強が認められた。このことから、クルクミンの抗炎症作用にはクルクミンの酸化が重要であると示唆された。クルクミン酸化物の中に親電子性の酸化体があることから、求核性のアミノ酸残基であるシステインのチオール基と反応することが予想された。クルクミン酸化物と低分子チオール化合物をインキュベーションし、質量分析計に供した結果、クルクミン酸化物のシステイン付加体の形成が認められた。このことから、酸化クルクミンが修飾付加体を形成することでタンパク質の機能性を変化させ、炎症抑制活性を発揮している可能性が示唆された。現在、クルクミン酸化物の炎症応答に関与するタンパク質に対する修飾について解析を行っている。