主催: 日本毒性学会
会議名: 第51回日本毒性学会学術年会
開催日: 2024/07/03 - 2024/07/05
がん化学療法誘発末梢神経障害(CIPN)はタキサン系抗がん剤によって高率に誘発され、四肢末端の痛み、しびれなどの症状を呈し、重症化するとがん治療継続の妨げとなる。タキサン系抗がん剤によるCIPN発症機序として神経軸索障害が推定されてきたが、全容解明には至っていないため、未だに予防法/根本的治療法は確立されておらず、アンメットニーズは極めて高い。
そこで、我々は、末梢神経系のグリア細胞である髄鞘形成シュワン細胞に着目し、CIPN発症機序の解明を目指してきた。その結果、1)タキサン系抗がん剤処置により、炎症性物質galectin-3の遊離を伴ったシュワン細胞の脱分化および脱髄が惹起されること、2)シュワン細胞から分泌されたgalectin-3依存的に末梢神経へとマクロファージが浸潤しCIPN発症の一因となることを明らかにした。さらに、モデルマウスとタキサン系抗がん剤の投与を受ける患者に共通して、CIPN発症時に血中galectin-3濃度が増加することを見出した。
一方、疼痛や感覚鈍麻の症状が混在するCIPNの複雑な発症機序のさらなる解明には、末梢感覚神経系を構成する神経節や軸索束での変化を経時的に個別解析できる新規ツールの開発が必要だと考えられた。しかしながら、従来までのin vitro・ex vivo評価系では経時的解析と個別解析の両方を実現するのは難しかった。そこで我々は、末梢神経研究のためにより最適化された新規3次元感覚神経オルガノイドの開発を行なった。
本シンポジウムでは、我々が推進してきたCIPN研究の最新知見を示すとともに、新たに開発した末梢感覚神経オルガノイドの有用性について紹介したい。