主催: 日本毒性学会
会議名: 第51回日本毒性学会学術年会
開催日: 2024/07/03 - 2024/07/05
非臨床でみられた毒性表現型の回避低減やその種差、並びにヒトへの外挿性評価は、安全性研究における大きな課題である。In vitro評価モデルは必要被験物質量が少ないこと、スループット性が高いこと、ヒトサンプルが使えることなどの利点がある一方、in vivoの毒性表現型を定量的に再現することが難しいなどの課題も存在している。近年、organ-on-a-chipやオルガノイドを含む様々な複雑系in vitro評価モデル(complex in vitro model:CIVM)が開発されており、これまでの単純なin vitroモデルのみでは評価が困難であった毒性事象の研究に活用され始めている。また、FDA Modernization Act 2.0によって、少なくとも米国では新薬開発における動物実験の義務付けが撤廃されたことで、今後さらなる動物代替法の活用が期待される。一方で、実際に弊社でCIVMを用いた評価に取り組む中で、創薬探索段階での活用においていくつかの課題も見えてきている。また、CIVMは、in vivo毒性試験と同様に「表現型」ベースの解析手法であるため、毒性反応の機序を明確に理解するためには、異なる観点が必要となる場合があると考えている。その1つの方法は、比較的単純なin vitro評価系に落とし込むことができるmolecular initiating event(MIE)の理解かもしれない。本発表では、CIVMの評価事例、また毒性機序や種差の理解のための「毒性標的探索」の活用例について紹介し、効率的に毒性理解・回避低減を行うための複雑系/単純系in vitro評価モデルの選択戦略や将来展望などについて議論する。