日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: S35-4
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シンポジウム35: 先進的in vitro model を用いた初期毒性評価戦略
ヒト腸管オルガノイドおよび画像解析を利用した消化管毒性評価法
*須藤 優喜
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抄録

消化管毒性は臨床で頻繁にみられる有害事象である。消化管毒性は患者のQOLを著しく低下させることから、非臨床の段階で消化管毒性懸念を明らかにすることは非常に重要である。

これまで消化管毒性のin vitro評価系は単一の株化細胞による単層培養が主であった。これらは幹細胞への影響や細胞間の相互作用を捉えることが不可能なため、検出感度や再現性、さらには臨床での消化管毒性の予測性に乏しい。一方で、腸管オルガノイドは未分化な幹細胞から成熟した細胞種を含み、三次元構造を有している。そのため、より生体内に近い環境での消化管毒性を評価できると考えられる。しかしながらオルガノイドなど高次培養系を用いたアッセイ系は操作の煩雑さがしばしば課題とされる。従って、新たに高精度でスループット性に優れる消化管毒性の評価系を構築する必要性があった。

我々は、消化管毒性を誘発する化合物は細胞生存性の低下に伴い、オルガノイドのサイズを減少させることを明らかにした。このことから、増殖を指標としたオルガノイドのサイズ定量から消化管毒性を評価することを想起した。そして、明視野画像からオルガノイドを認識し、面積や輝度などの特徴量を抽出できる画像解析アプリを開発した。本アプリにより、腸管オルガノイドのサイズは消化管毒性を鋭敏に捉えることのできるマーカーと考えられた。さらに、対象の明視野画像のみで解析を行える点は、教師データの量と質に依存する機械学習と異なり簡便性に優れ、実験者の負担軽減につながる。

本発表では構築したオルガノイドの画像解析ツールとそれを用いた消化管毒性評価系について紹介し、今後の非臨床における安全性評価での展開について議論したい。

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