日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: S5-4
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シンポジウム5: 医薬品毒性機序研究部会シンポジウム:毒性発現機序(AOP)の理解とその毒 性評価への応用
ラット発がん性試験の代替法開発:発がん機序に基づくインビトロ試験を活用したリードアクロスの試み
*吉成 浩一
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抄録

化学物質の安全性評価において、動物実験代替法の開発が強く求められているが、毒性の多様性や発現機序の複雑さなどの理由から、反復投与毒性試験や発がん性試験の代替法の開発はほとんど進んでいない。そのような中、類似物質の毒性試験データに基づいて未試験物質の毒性を予測する、リードアクロスと呼ばれる手法に期待が寄せられている。リードアクロスでは、評価対象物質の毒性を、化学構造や生物学的特徴が類似した物質(ソース物質)の毒性情報から類推することから、ソース物質の選択が非常に重要である。私達の研究室では、ラット発がん性試験の代替法開発を最終的なゴールとして、非遺伝毒性発がん性を、化学構造情報と発がん機序関連インビトロ試験結果を利用したリードアクロスにより予測する手法の開発に取り組んでいる。本研究では、食品安全委員会で公開されている農薬評価書のラット2年間発がん性試験結果を収集してデータベース化し、良性又は悪性腫瘍の有無を目的変数としている。手法の概略は以下の通りである:①市販ソフトウェアで分子記述子を計算し、正規化した分子記述子を利用して物質間のユークリッド距離を計算する。②各被験物質から一定範囲の距離にある物質をソース物質候補(第一次ソース物質)として選択する。③被験物質と第一次ソース物質について発がん性と関連するインビトロ実験を実施する。④被験物質と実験結果が一致する物質のみを最終ソース物質として選択する。⑤最終ソース物質でリードアクロスを行い、陽性判定基準をデータセット全体の各腫瘍の発生率として発がん性を予測する。農薬は様々な臓器に腫瘍を引き起こしうるが、私達は、上皮細胞傷害と関連する鼻腔がん、胃がん、膀胱がん、核内受容体活性化や酵素誘導が関与する肝がん、甲状腺がんなどを中心に研究を進めている。本セッションでは本研究に関する最近の成果を紹介する。

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