日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: W1-3
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ワークショップ1: ニューモダリティ医薬品にユニークな新たな開発戦略
革新的な技術を搭載した抗体医薬品の非臨床免疫毒性・免疫原性評価
*久保 千代美
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抄録

抗体治療薬は、現在、癌、自己免疫疾患、その他の重篤な疾患の治療を可能にする医薬品として確立されている。安全性に対する懸念を生む要因は標的タンパク質やその生物学的性質と生体の相互作用によって生じること、患者の免疫系が外来タンパク質に反応することなどによって生じ、その反応は様々な要素によって左右される。その要素の一つである抗体エンジニアリングの多様化と進化は、医薬品の治療の有効性・特異性を向上させる一方で非臨床安全性研究の複雑性と困難性を増加させる傾向にある。そのため、製薬各社では、創薬分子ごとに独創的なアイディアを盛り込んで非臨床安全性研究を構成することによって、被験者が被る可能性のある毒性を同定し、想定される機序に基づきできる限り定量的に毒性の発現強度と曝露の関係を予測し、安全性マネジメントの策定へ役立てることに挑戦している。患者さんで認められる反応と非臨床評価で検出できる反応の間に生じやすい隔たりの一つとして、免疫学的な反応差(種差・年齢差・健康状態の差など)が挙げられる。抗体医薬品では頻繁に免疫系の反応が関わるため、非臨床研究ではそのような免疫学的な隔たりをも考慮に入れて、毒性の特徴を明らかにし得られた情報を治験に役立てる必要がある。しかし、その免疫学的な反応や隔たりを推測する評価では、免疫反応が創薬分子の特性に依存しやすいことなどから確立された定型手法が少なく、創薬分子に応じたユニークな対応が必要となることが多い。今回の発表では、非臨床安全性研究の構成物のうち、in vitro及びin vivo免疫関連評価に焦点を当て、特に創薬前期評価として免疫原性及び試験動物種選択評価、創薬後期評価として毒性懸念に対する種差検討に関し実施例も含めご紹介したい。そして、非臨床免疫関連評価において、評価に限界がある中でどのように得られた情報を活かすべきか、また、今後どのようなことに挑戦すべきであるかを議論したい。

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