主催: 日本毒性学会
会議名: 第51回日本毒性学会学術年会
開催日: 2024/07/03 - 2024/07/05
ヒトの初代腎細胞や腎臓由来株化細胞は薬物トランスポーターなどの腎機能に関わる遺伝子発現を維持しておらず、いまだ創薬で利用されることは少ない。一方、動物実験では臨床試験への予測性の低さ、種差や動物愛護が問題となっている。そのため、創薬スクリーニングや機序解明に利用できるヒト腎細胞の製品化が望まれている。近年ではiPS細胞由来腎オルガノイドやMicro Physiological Systemへの応用など,高機能な腎細胞の開発が進められている。本研究では腎臓の主要な薬物トランスポーター及びエンドサイトーシス受容体の発現量がヒト腎皮質と近いヒト初代培養近位尿細管上皮細胞の三次元培養スフェロイドモデル(3D-RPTEC®、日機装)を用いて腎毒性評価の有用性を調べた。
既知の腎毒性薬物のうち、Tenofovir(organic anion transporter (OAT)の基質)を3D-RPTECに曝露したところ、細胞内ATP量が減少した。一方、従来の2次元培養のRPTECではTenofovirによるATP減少は見られず、腎毒性の評価には薬物トランスポーターの発現が必要である事が示された。さらに、臨床での腎毒性の有無が既知の30種以上の薬物を3D-RPTECに7日間曝露し、細胞内ATPの20%減少濃度と有効血中濃度との乖離を安全域として算出した。安全域100倍以下を指標に腎毒性の陽性率を調べた結果、およそ80%のSensitivity及び90%以上のSpecificityが得られた。また、腎毒性の機序解明やスクリーニングに利用できる共焦点イメージサイトメーター(CQ1、横河電機)を用いたHigh Content Analysisの有用性についても検証した。
本発表では3D-RPTECを用いた創薬への応用例や核酸医薬品への取り組みについて紹介する。