抄録
近年、さまざまな学会において、消防や医療機関など、災害のファーストリスポンダーとなりうる要員を対象とした災害医療の研修会として、多数傷病者への対応標準化トレーニングコース(Mass Casualty Life Support:以下MCLSと略す)が開催されている。
MCLSコースの講義の一つとしてトリアージタグ (以下、タグと略す)に関し、30分の時間を設け座学と記載演習を行っている。記載演習では、講義担当者がスライドに示したトリアージ判定内容を読み上げ、受講者がそれをタグに記載する(以下、スライド形式とする)方法で行っているが、「実践的でない」と言う意見が指導者から聞かれた。そこで、指導者が、START法とPAT法で傷病者役をトリアージ判定し、受講者がその内容をタグに記載する方法(以下、デモ形式とする)を取り入れてみた。しかし、デモ形式では、「判定が早すぎて、ほとんど記載できない受講生がいる。」という意見が指導者から聞かれた。そのため、デモ形式でのタグの記載状況を把握し、指導方法の工夫が必要か検討するために調査を実施した。タグの調査や研究に関する報告では、電子化システムに関する報告や医療機関での災害用カルテに関するものはあるが、記載演習の指導方法の比較検討はなかった。