富山救急医療学会
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Print ISSN : 2185-4424
一般演題
分娩介助の判断と対応について
濱口 友宏
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2017 年 35 巻 p. 4-

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抄録

はじめに
救急出動は増加の一途をたどっていますが、産科救急は、出動機会が少なく多くの隊員が何らかの不安を抱えているのではないでしょうか。
今回経験した車内分娩をもとに、改めて産科救急に対する活動について検討した。

症例
35歳女性。妊娠32週の経産婦、自宅で陣痛が始まったため救急要請されたもの。
現場到着時、意識清明、居間で仰臥。破水や性器出血は無く、着衣は濡れていない。
要請の約1時間前から陣痛発来し、常時「産まれそう」と訴え続ける。直ちに救急車内へ収容し、同乗の夫に会陰部を確認してもらったが児頭の娩出等はなかった。
搬送中、着衣の上から股間部に膨らみを認め、救急隊が会陰部を観察したところ、児頭が娩出しているのを確認したため、分娩介助を実施した。

考察
今回の事案は、娩出した新生児の呼吸状態や皮膚色が良好ではなかったため、病院到着まで保温や吸引等の処置を優先した。
分娩時に異常があり発見が遅れた場合、母子共に命の危険にさらされる可能性があることから、救急救命士のみならず、全救急隊員が母体や新生児の観察、評価、処置を適切に行えなければならない。 産科救急に直面する機会は非常に稀であるため、苦手意識や怖さを持っている隊員も多いと思われるが、胎児の状態や分娩期がどの段階であるかを見極め、分娩介助や新生児の蘇生等を的確に行うための知識の修得が我々に求められていると考える。

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