富山救急医療学会
Online ISSN : 2434-8457
Print ISSN : 2185-4424
35 巻
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
一般演題
  • 東 洋一
    原稿種別: 一般演題抄録
    2017 年 35 巻 p. 3-
    発行日: 2017/08/26
    公開日: 2020/09/05
    ジャーナル フリー
    ・はじめに
    ガイドライン2015において病院前12誘導心電図の推奨が再強調され、救急隊接触から90分以内のPCIを目標とすると明記された。それを踏まえ氷見市救急隊においても平成28年から12誘導心電図を記録した症例がみられるようになった。それらの症例についての報告と今後期待される展望について紹介する。
    ・症例
    症例1:47歳男性階段から転落し意識がないとの指令。接触時、階段にもたれるように座っており、JCS2桁、橈骨動脈弱く触知、明らかな外傷見られずアルコール臭強い。
    既往にDMと心疾患、HR40→車内で心電図記録した症例

    症例2:87歳女性、急激な腹痛が出現し嘔吐、その後胸痛を訴えぐったりし救急要請。通報段階で指令員がCPAと判断しドクヘリ要請。接触時JCS2桁、橈骨触れず、総頸微弱で冷感著明でショック判断、除細動パッド装着ワイドQRSでST低下がみられ、RP到着までに心電図記録した症例

    ・考察
    症例1では意識障害の原因が他にも挙げられ複合的な病態の可能性も否定はできないが、病院での原因療法までの時間短縮には12誘導記録が有用だったと考えられ、症例2ではドッキング時に医師による心電図評価が可能となることから現場での診断、治療及び病院選定に有用だったと考えられる。

    ・現状課題と今後期待される展望
    富山県においても、ICTシステムの導入により従来の電話による情報伝達より精度の高い情報を現場から送信することで、病院前での大まかな診断の目安となり、治療開始までの時間短縮に繋がり良好な転帰となることが期待される。
  • 濱口 友宏
    原稿種別: 一般演題抄録
    2017 年 35 巻 p. 4-
    発行日: 2017/08/26
    公開日: 2020/09/05
    ジャーナル フリー
    はじめに
    救急出動は増加の一途をたどっていますが、産科救急は、出動機会が少なく多くの隊員が何らかの不安を抱えているのではないでしょうか。
    今回経験した車内分娩をもとに、改めて産科救急に対する活動について検討した。

    症例
    35歳女性。妊娠32週の経産婦、自宅で陣痛が始まったため救急要請されたもの。
    現場到着時、意識清明、居間で仰臥。破水や性器出血は無く、着衣は濡れていない。
    要請の約1時間前から陣痛発来し、常時「産まれそう」と訴え続ける。直ちに救急車内へ収容し、同乗の夫に会陰部を確認してもらったが児頭の娩出等はなかった。
    搬送中、着衣の上から股間部に膨らみを認め、救急隊が会陰部を観察したところ、児頭が娩出しているのを確認したため、分娩介助を実施した。

    考察
    今回の事案は、娩出した新生児の呼吸状態や皮膚色が良好ではなかったため、病院到着まで保温や吸引等の処置を優先した。
    分娩時に異常があり発見が遅れた場合、母子共に命の危険にさらされる可能性があることから、救急救命士のみならず、全救急隊員が母体や新生児の観察、評価、処置を適切に行えなければならない。 産科救急に直面する機会は非常に稀であるため、苦手意識や怖さを持っている隊員も多いと思われるが、胎児の状態や分娩期がどの段階であるかを見極め、分娩介助や新生児の蘇生等を的確に行うための知識の修得が我々に求められていると考える。
  • 古川 眞大, 奥寺 敬
    原稿種別: 学生発表抄録
    2017 年 35 巻 p. 5-
    発行日: 2017/08/26
    公開日: 2020/09/05
    ジャーナル フリー
    近年の気温上昇により熱中症の患者数は変化しているのか気になっていた。そこで今回、富山県に限定して熱中症患者の状況を検討していきたい。周知の事実かもしれないが、熱中症対策をするにおいて、気温だけで判断することはできず、環境省が公開している暑さ指数(WBGT)で判断する必要がある。しかし、テレビや新聞ではあまり目にすることはなく、一般の人にはあまり認知されていないのではないかと考える。そこで、暑さ指数とは何かというのを改めてまとめた上で、より多くの人にこの暑さ指数を広めていくにはどのような方法が有効なのか討論していきたい。
  • 赤尾 幸祐, 奥寺 敬
    原稿種別: 学生発表抄録
    2017 年 35 巻 p. 6-
    発行日: 2017/08/26
    公開日: 2020/09/05
    ジャーナル フリー
    ドクターヘリは全国では2001年4月に発足し、現在では全国で50機以上のドクターヘリが飛び、出動件数は年間2万件を超えている。
    富山県では2015年8月24日より運航が開始された。県の高度救急医療体制検討会では以前からドクターヘリ導入による効果が活発に推算され、現在の運航に辿り着いている。
    今回、私は実際に富山県におけるドクターヘリ導入から2年が経過しようとしている今、ドクターヘリの運航開始によって富山県の救急医療の現状がどのように変化したのか、ドクターヘリ運航の意義は推定通りのものであったのか、ということに関心を持ち、種々の記録を収集した。それらの記録をまとめ、考察を加えたものを報告する。
  • 藤井 宏年
    原稿種別: 一般演題抄録
    2017 年 35 巻 p. 7-
    発行日: 2017/08/26
    公開日: 2020/09/05
    ジャーナル フリー
    【背景】当消防本部では、集団救急事案発生時において「集団救急業務計画」を定めており発災時において、発動するものであります。
    【対象事例】平成29年4月に当消防本部の管轄内である小矢部市において交通事故による集団救急事案が発生し、当該集団救急業務計画に基づいた活動とドクターヘリを要請し、重症傷病者を搬送した事例について発表いたします。
    【結果】MCLS研修での学びに基づき、災害発生宣言と医療圏内への病院にスイッチを早期に入れ、現場においてSTARTトリアージとPAT法を用いて、精度の高いトリアージによって全ての重症外傷傷病者を適切な医療機関に搬送できた奏功例を発表します。
    【考察】全ての傷病者を適切に搬送できた反面、現場において救急隊と消防隊との間でうまく疎通が図れず現場滞在時間の延長を招いた。また、トリアージタグを活用しなかったことから、搬送した救急隊や収容先の医療機関へ情報提供の欠如が生じた。
  • 笹原 伸二
    原稿種別: 一般演題抄録
    2017 年 35 巻 p. 8-
    発行日: 2017/08/26
    公開日: 2020/09/05
    ジャーナル フリー
    平成29年5月、当消防本部管内の国道8号バイパスの交差点において、信号待ちで停車中の車列に10tトラックが衝突。車両5台が絡む交通事故が発生した。
    トラックに追突された車両のうちの1台は衝突直後に車両後部から出火。衝突のはずみで車両は大きく変形し、ドア等は開閉不能。運転手は車体に体を挟まれ、脱出不能状態。
    当該事故における負傷者は合計5名(うち1名はドクターヘリにより搬送)
    今回の事案では、指揮隊1隊、消防隊3隊、救助隊2隊、救急隊3隊が出動している。
    考察も含め、この事案を報告する。
  • 谷 昌純, 宮越 達也, 古村 芳樹, 水田 詩織, 河合 浩太, 坂田 行巨, 渕上 貴正, 大鋸 立邦, 松井 恒太郎, 齊藤 伸介, ...
    原稿種別: 一般演題抄録
    2017 年 35 巻 p. 9-
    発行日: 2017/08/26
    公開日: 2020/09/05
    ジャーナル フリー
    小児の交通外傷による重症頭部外傷で昏睡状態、呼吸停止となったが、右不全片麻痺、右動眼神経麻痺は残存するものの意識障害は改善しリハビリ病院転院となった症例を経験したので報告する。
    症例は7歳女児。2017年7月小学校からの帰宅途中の夕刻、右側より来た普通乗用車に約50km/hのスピードで衝突され5mほど飛ばされた。受傷直後より意識がなく付近にいた教師がAEDを装着し心肺蘇生を行った。心臓マッサージでの体動は激しく、救急隊が接触し総頚動脈の触知を認めたため心臓マッサージは中断させた。受傷機転よりLoad&Goの適応でバックバルブマスクによる補助換気を行いながら当院に搬送された。意識レベルはGCS4点(E1V1M2)であり切迫するDを認めた。血液ガス分析では呼吸性アシドーシスを認めた。当院初療途中で呼吸停止となり気管挿管を施行した。Trauma pan scan CTを施行したところ、外傷性くも膜下出血、脳挫傷、肺挫傷、右恥坐骨骨折を認め、他にも右前腕骨骨折を認めた。重症頭部外傷に対しては保存的加療を行う方針でICUでの脳平温療法を行った。第5病日に人工呼吸器から離脱し、第7病日一般病棟へ転棟となった。MRIでびまん性脳軸索損傷を両前頭葉中心に認めた。右不全片麻痺、右動眼神経麻痺は残存するものの意識障害は改善しリハビリ病院転院となった。
  • 渕上 貴正, 宮越 達也, 古村 芳樹, 水田 詩織, 河合 浩太, 坂田 行巨, 大鋸 立邦, 松井 恒太郎, 齊藤 伸介, 川端 雅彦
    原稿種別: 一般演題抄録
    2017 年 35 巻 p. 10-
    発行日: 2017/08/26
    公開日: 2020/09/05
    ジャーナル フリー
    【症例】4才2ヶ月女児
    【既往歴】特記なし
    【主訴・現病歴】保育園の園庭で遊んでいた際に、ジャンプした後突然倒れ、目撃者により救急要請された。救急隊現着時心肺停止状態であったためドクターヘリ(以下DH)要請された。救急隊接触時bystander CPRあり。初期波形は心室細動であり除細動を1回施行後、発生11分後に自己心拍再開した。
    【現症】DHスタッフ接触(発症23分後)時自発呼吸あり、頸動脈触知可能、HR 108回/min、GCS3点(E1V1M1)。
    【経過】静脈路確保後ドクターヘリにて当院搬送した。途中嘔吐を認め気管挿管を施行した。(発症38分後)病院到着後も多形心室頻拍ないし心室細動と自己心拍再開を繰り替えしたため電気的除細動、アミオダロン、硫酸マグネシウムを投与し安定した心拍再開を得てICUへ入院、目標体温管理をはじめとする全身管理が施行された。第26病日に自宅退院となった。経過中の精査にて心形態異常は認めず、心電図にてnotched T、Twave alternanといった所見を認めQT延長症候群が疑われた。
    【考察】幼児の院外心停止は稀である。学校における内因性心停止は目撃があることが多く、bystanderCPRやAEDの使用により良好な転帰を得られるケースが多いものの、本症例のように致死性不整脈を繰り返す場合、ドクターヘリ内でも速やかな薬剤投与が必要となる。体重別薬剤換算表の使用やスタッフ間でのシミュレーション教育といった日常的な準備が重要と考えられる。
    【結語】小児の院外心停止例に対して日頃から準備を行うことが重要である。
特別セッション
  • 島田 真理子
    原稿種別: 特別講演抄録
    2017 年 35 巻 p. 11-
    発行日: 2017/08/26
    公開日: 2020/09/05
    ジャーナル フリー
    当院は平成20年に富山県で初の地域医療支援病院に認定され、地域の医療機関等と連携しながら「地域完結型」の医療を提供している。地域医療支援病院では、地域の診療所・クリニック等では対応困難な救急医療や専門的な治療、高度な検査、手術等を行い、急性期の治療後はかかりつけ医として地域の医療機関へ逆紹介を行っている。緊急に入院が必要な患者さんを受け入れるベッドを常に確保できるようベッドコントロールや退院支援も強化し、地域との連携がますます重要となっている。それぞれの医療機関が特性を活かし、役割分担しながら地域全体で患者さんを支えていく必要がある。
    近年、救急搬送されてくる患者の背景として、経済的や社会的、家族関係など複合的な問題を抱えたケースが増えている。また、独居世帯や高齢者のみの世帯、近所住民と疎遠な家庭も増えており、地域とのつながりも希薄な状況に変化しつつある。入院治療が必要な場合や医療費の支払いが困難な場合など、必要に応じて医療ソーシャルワーカーが早期介入し、相談対応している。
    今回、富山市民病院地域医療部において地域の医療機関から救急要請があった場合の地域連携室の受け入れ体制と、入院時や退院に向けての相談支援、地域との連携について紹介する。
feedback
Top