東洋音楽研究
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1937 年 1 巻 1 号 p. 1

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抄録

吾等同人相圖つて、「東洋音樂學會」を結成して漸く歳餘、早くも多數同好家の力強き賛助を得て、こゝに機關誌「東洋音樂研究」を創刊する。本誌の刊行は, 日本を中心として廣く東洋諸國の音樂文化を、純然たる學究的立場より歴史的並に理論的に研究し、我國に於ける音樂學建設に貢獻しようと云ふ. 本學會の目的を實現すべき事業の最も重要なる一つである。東洋音樂に對する世界の關心は、近來頓に高まりつゝある。歐米人によつてなされた研究は數に於いても我々のもつものを遙に越え、殊に最近獨・佛・英に隆んな比較音樂學によつて、科學的、體系的なる東洋音樂の研究がなされつゝある。然し彼等の研究が、東洋精神の認識に於いて〓くる所のあることは論を僕たない。吾々東洋人は彼等の科學的研究法を學びつゝも彼等の及び得ざる東洋音樂の眞諦の解明に、獨自な研究をなすことが出來る。されば本學會の存在は、對外的には, 世界の音樂學界に寄與する所あるを確信して疑はない。而して對内的には、歴史學的並に音樂學的研究法を確實且兩全に守ることゝ、個別研究の外に有機的なる共同乃至綜合研究をなすことゝの二點に於いて、吾學食の存在を意義あらしめたい。且又、吾んの音樂文化は, 音樂と關聯をもつ凡ゆる文化-舞踊・演劇・民俗・文學・自然科學等- を意味する。殊に吾々が對照とする東洋の音樂に於いてはかくあらねばならない。從つて吾々の研究はこれらの諸文化との眞に有機的なる綜合をも目指してゐる。既に發達せる我國諸文化圈の中に, 新たなる音樂學の部門を建設するに當り、弘く同好の士の教示と聲援とを願ふ所以である。

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© 社団法人 東洋音楽学会
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