東洋音楽研究
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インドネシアの女形舞踊家ディディ・ニニ・トウォの創作活動
福岡 まどか
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2006 年 2006 巻 71 号 p. 85-97

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抄録

この論考では、インドネシアの女形舞踊家、ディディ・ニニ・トウォ Didik Nini Thowok (1954-) の創作活動について記述する。彼は、ジャワ島の古都ジョグジャカルタを活動拠点として、日本をはじめ、世界の各地で活躍する踊り手である。踊り手としての活動のほかに、コメディアンとして、またテレビドラマや大衆演劇の俳優としても活躍している。
ディディ・ニニ・トウォの創作活動の特徴は、様々なジャンルの芸術伝統に精通し、それに基づく作品を作っていること、また、女形舞踊家として性別の境界を越える試みを行っていることである。彼は二〇〇〇年以来、「クロス・ジェンダー」という概念を提唱し、ジェンダーの境界を越えることを強く意識している。この論考では、ディディ・ニニ・トウォの創作活動を、伝統舞踊に基づく創作活動の一つの事例として位置づけ、創作作品における「クロス・ジェンダー」の手法の一つとして仮面を用いる創作舞踊について取り上げた。二〇〇五年に創作された「デウィ・サラック・ウラン」という作品の仮面とその表現を考えることによって、伝統的な仮面を用いながら、それに独自の解釈を加えていくディディ・ニニ・トウォの独特な創作のスタイルを指摘した。

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