東海公衆衛生雑誌
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妊娠初期における推奨体重増加量の知識と総エネルギー摂取量,栄養素およびサプリメントの使用状況の関連
鈴木 美穂鈴木 孝太由田 克士
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2019 年 7 巻 1 号 p. 151-157

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抄録

目的 妊娠中の推奨体重増加量についての知識の有無と,栄養素等の摂取状況を明らかにすることとした。

方法 三重県S市にある産科医療機関において,2017年8月から2018年3月に受診した妊娠16週未満の妊婦108人を対象に,食生活に関する質問紙調査と,秤量記録法による食事調査を実施した。質問紙調査で推奨体重増加量の知識を問い,適正範囲内の回答の正誤により2群(知識あり群,知識なし群)に分類した。また,サプリメント使用の有無も問い,使用している場合は具体的な種類の回答を求めた。食事調査で算出された総エネルギー量と各栄養素の摂取量,サプリメントの使用と種類について,推奨体重増加量の知識の有無で比較した。

結果 調査対象妊婦は,妊娠週数12.5±1.2(週),平均年齢30.1±4.9(歳),妊娠前のBMI21.1±3.2(kg/m2),初産婦59人(54.6%)であった。推奨体重増加量の知識の有無による栄養素等の比較を行ったところ,エネルギー摂取量は,知識あり群1,547.0±452.4kcal,知識なし群1,660.9±350.5kcalで有意差はなかった。たんぱく質は知識あり群14.9±3.0g・知識なし群14.1±2.4gであった。脂質は知識あり群29.8±7.2g・知識なし群28.7±5.5gであった。炭水化物は知識あり群205.9±63.2g,知識なし群は230.5±50.5gで有意に多かった(p=0.02)。妊娠中に特に配慮を要する栄養素は,葉酸は知識あり群220.7±76.5㎍・知識なし群236.8±97.0㎍,鉄は知識あり群6.0±2.1mg・知識なし群6.5±2.7mg,カルシウムは知識あり群438.5±167.9mg・知識なし群491.9±248.5mgで両群での有意差はみられなかった。

結論 妊娠中の推奨体重増加量の知識がある妊婦は,知識がない妊婦に比べて,エネルギー摂取量が低く,栄養素摂取量は必要量を下回る割合が多かった。このことから,正しい知識を有する妊婦はエネルギー摂取に対する過剰な意識が,不適切な栄養摂取状況に影響を与えている可能性が示唆された。

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© 2019 東海公衆衛生学会
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