東海公衆衛生雑誌
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  • 湊 京子, 中根 昇吾, 伊藤 由起, 加藤 沙耶香, 杉浦 真弓, 齋藤 伸治, 上島 通浩
    2025 年12 巻2 号 p. 87-94
    発行日: 2025/03/01
    公開日: 2025/03/01
    ジャーナル フリー

    目的 前向きコホート研究において,長期に渡るコホートの維持は研究の成否にかかわる最重要課題の1つである。一方,出生コホート研究において,参加者維持のための創意工夫に基づいた現場の絶え間ない努力に関しての記述は非常に乏しいのが現状である。我々は環境省による国家プロジェクト「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」の15拠点の1つである愛知ユニットセンター(UC)を2010年度から運営している。エコチル調査の開始当初の基本計画では胎児期から13歳に達するまでの追跡を想定しており,13歳以降の調査継続については,その時点の研究成果やフォローアップ率などを勘案して判断するとされていた。2021年度の有識者検討会では,高い追跡率と高い質問票回収率等により13歳以降も調査を展開することが必要であるとされ,調査継続のために再同意取得が必要となった。本研究では我々が再同意取得のために行った取り組み内容とその効果について記述し,13歳以降調査に向けたさらなる再同意率向上のための考察を行うことを目的とした。

    方法 2023年度から再同意取得のため,ニュースレター, チラシ,ショートメッセージや電話での再同意勧奨などに加え,小学6年生を対象とした対面調査(学童期検査)を13歳以降調査継続の周知と再同意取得の重要な機会と位置付け,学童期検査参加の勧奨も積極的に行った。

    結果 2023年度対象者778名のうち13歳継続の再同意者518名(66.6%),不同意64名(8.2%),未反応者196名(25.2%)であった(2024年5/8現在)。再同意者は子どもの就学後の質問票提出率が高く,学童期検査への参加率が高かった。未反応者に対する電話勧奨の効果は高く,75名のうち13歳以降調査の継続同意の意向を示した者は50名(手続き済み34名)であった。不同意者,未反応者においては,多忙であることに加え,専用アプリインストールを伴う再同意手続きやウェブ形式での質問票回答に対しての苦手意識や不安感が多数見受けられた。

    結論 学童期検査への参加を促し対面でコミュニケーションを行うことは13歳以降調査継続には有効と考える。また,電話による再同意手続きの勧奨はコホート維持率が低くなるとの報告もあるが,今回の結果では効果的であった。今後のコホート維持においても,参加者とのコミュニケーションを積極的に推進し,ウェブ形式質問票調査のデジタル・ディバイド(情報格差)の影響を受ける参加者の負担感を軽減する戦略が必要と考える。

  • 石上 早苗, 鈴木 知代, 豊島 由樹子, 黒野 智子, 式守 晴子
    2025 年12 巻2 号 p. 95-103
    発行日: 2025/03/01
    公開日: 2025/03/01
    ジャーナル フリー

    目的 地域包括支援センターの職員(以下,センター職員とする)が抱える支援困難事例の対応経験の有無と困難さ及び支援の不得意感の実態,あわせて困難さ・不得意感と経験年数の関連を明らかにすることを目的とした。

    方法 A県内に設置されている地域包括支援センター(66箇所)に在籍している専門職(448通)を対象に郵送法による自記式質問紙調査を実施した。調査項目は, 日頃センター職員が相談支援業務を行う中で,支援が困難だと感じる「困難対応の経験の有無」,「困難さのレベル」及びセンター職員として行う支援業務の「不得意感」について回答を得た。またセンター職員の経験年数を従属変数,「困難さ」と「不得意感」の回答を2群に分け,各項目を独立変数としカイ二乗検定をおこなった。分析は, 解析ソフトIBM SPSS Statistics Ver22.0を使用し,統計学的有意水準は5%(両側)とした。

    結果 本研究の調査期間は2021年1月5日から1月29日,回答数は206名(回収率:45.9%)であった。このうち回答に欠損のあった6名を除外し200名(有効回答率:44.6%)を分析対象とした。センター職員の8割以上の者が対応経験のある項目は, 【Ⅰ.事例側の要因】として,経済的困窮, 病識欠如, 服薬の不備,整理整頓不能,キーパーソン不在など,【Ⅱ.家族等の支援者側の要因】として, 家族内の複数問題,家族の病識・状況欠如,家族(支援)力の脆弱性,家族の疲労・疲弊などで,これらの「困難さ」とセンター職員の経験年数には有意差が認められた。またセンター業務の不得意感と経験年数では,汚れた(ゴミ屋敷)環境の相談,医療的な処置を要する患者対応, チームアプローチなどで有意差がみられた。

    結論 困難事例の「困難さ」や「不得意感」は,経験年数と関連があり,困難事例の対応は,経験の積み重ねに基づく支援技術の向上によって「困難さ」や「不得意感」を減少させていく可能性があることが示唆された。

  • 萩野 翔太, 森谷 優人, 大塚 隼士, 柴田 陽介, 尾島 俊之
    2025 年12 巻2 号 p. 104-111
    発行日: 2025/03/01
    公開日: 2025/03/01
    ジャーナル フリー

    目的 本研究は,妊婦のイライラ感と低出生体重児(LBW:Low birth weight)出生との関連を明らかにすることを目的とした。

    方法 対象者は掛川市において令和4年4月から令和5年3月に出産した母親521人とした。母子健康手帳交付時に配布した自記式アンケートから妊婦の個人・環境因子,妊娠・出産歴の情報を得た。さらに,出生児カルテからLBWなどの今回の妊娠・出産に関する情報を得た。LBW出生の有無を目的変数,妊婦のイライラ感を説明変数とし,LBW出生と関連が報告されている妊婦の体型,喫煙習慣,高齢出産,在胎週数,妊娠合併症を調整したロジスティック回帰分析を行い,オッズ比と95%信頼区間を算出した。

    結果 対象者のうち44人(8.4%)がLBWを出産した。LBW出生に対するオッズ比(95%信頼区間)は,妊婦にイライラ感があると4.39 (1.60-12.01)となり,LBW出生と有意な関連があった。

    結論 妊婦のイライラ感は,LBW出生と関連があることが示された。今後,イライラ感を訴える妊婦に対する有効な保健指導介入の検討が望まれる。

  • 尾関 佳代子, 尾島 俊之
    2025 年12 巻2 号 p. 112-118
    発行日: 2025/03/01
    公開日: 2025/03/01
    ジャーナル フリー

    目的 近年,医療のデジタル化が急速に進展し,患者の利便性と医療提供者の効率性向上に寄与するサービスとしてオンライン服薬指導も期待されている。しかし,その受容には未だ多くの課題があり,その理由や背景には様々な要因が関与している。本研究は患者のオンライン服薬指導の利用希望に影響を与える要因を明らかにし,オンライン服薬指導の普及と改善に資することを目的とした。

    方法 2023年10月20日~24日,オンラインリサーチ会社の登録者20歳以上の6,000人を対象に,「オンライン服薬指導を受けた経験の有無」及び「処方箋による薬の受取経験の有無」についてスクリーニング調査を実施し,オンライン服薬指導経験者及び非経験者を各250名ずつ抽出し,詳細なアンケート調査を実施した。調査項目には,「利用薬局の数」,「薬局の立地」,「かかりつけ薬局の有無」,「自宅から薬局までの所要時間」,「処方箋を受け取っている医療機関の数」,「オンライン情報収集の有無」,「フォローアップ希望の有無」,「薬剤師への相談経験」,「副作用の既往」,「薬への不安や質問希望」などが含まれた。クロス集計,ロジスティック回帰分析を用いて,各要因とオンライン服薬指導経験との関連性を検討した。

    結果 オンライン服薬指導経験者は若年層で男性が多く,かかりつけ薬局を持ち,薬局までの所要時間が30分以上,受診医療機関数が多く,オンラインでの情報収集を頻繁に行っている割合が高かった。さらに,フォローアップを希望し,薬剤師に相談して良かった経験,副作用の既往,薬について不安を感じることがある割合が高かった。ロジスティック回帰分析の結果も同様に,「かかりつけ薬局の利用」,「自宅から薬局までの所要時間の長いこと」,「複数の医療機関の利用」,「オンライン情報収集の頻度高」,「フォローアップ希望有」,「薬剤師への相談での良い経験有」,「副作用の既往有」,「薬への不安や質問希望有」が,オンライン服薬指導の受容に有意な関連を示した。

    結論 本研究の結果を踏まえ,オンライン服薬指導の普及を図るためには,デジタルリテラシーの向上とオンライン医療サービスの利便性の周知,特に高齢者やデジタルデバイスに不慣れな患者へのサポート体制の整備が重要であることが浮き彫りとなった。また,患者がオンライン服薬指導のメリットを享受できるように,適切な施策を講じることが求められることも示唆された。

  • 鈴木 岸子
    2025 年12 巻2 号 p. 119-128
    発行日: 2025/03/01
    公開日: 2025/03/01
    ジャーナル フリー

    目的 生活支援コーディネーター(以下「SC」)の資源開発の現状から,開発を促進する要因および阻害する要因を明らかにすること。

    方法 機縁法を用いて募集したSC9人に対して,2021年3月から同年7月にかけて半構造化面接を実施した。逐語録は,促進要因と阻害要因にわけ,それぞれのコード,サブカテゴリ,カテゴリを生成した。分析には,うえの式質的分析法を用いた。

    結果 SCの保有資格(複数回答)は,社会福祉士8人,保育士2人,保健師1人だった。配属協議体は,第1層協議体(以下「1層」)3人,第2層協議体(以下「2層」)5人,協議体無1人だった。資源開発(複数回答)は,主に,4人が総合事業を開発し(通い場づくり4件,買い物支援と訪問系各1件),5人は生活支援の担い手養成(養成講座の運営3件,人材確保2件)だった。さらに,地域の要望で,介護保険以外の資源開発が2件あった。促進要因は,4カテゴリ【住民主体を支援】【地域をコーディネートする知識・技術】【根回しからの信頼関係構築】【資源開発に活かす意図的な情報の収集と共有】を生成した。阻害要因は,2カテゴリ【SC業務に対する理解不足】【地域・地縁組織との関係構築の困難さ】を生成した。

    結論 SC全員は,地域の状況に応じた資源開発に着手し,主な開発は地域支援事業だったが,介護保険制度以外の資源開発も見られた。促進要因は,SCが裏方に徹し住民主体を支援したこと,地域をコーディネートする知識・技術を用いて,様々な組織に根回しし,信頼関係構築をしたこと,さらに,資源開発に活かす意図的な情報の収集と共有があったことだと考えた。阻害要因は,所属組織や行政等のSC業務に対する理解不足と,地域・地縁組織との関係構築の困難さだと考えた。上記に加え,配属協議体別の発言から,SCの活動区域,配置人数,配属協議体の有無も,促進・阻害要因に影響したと考えた。

  • 内海 美穂, 大石 景子, 小林 悦子, 尾島 俊之
    2025 年12 巻2 号 p. 129-134
    発行日: 2025/03/01
    公開日: 2025/03/01
    ジャーナル フリー

     掛川市の1歳6か月児健康診査(以下,1歳半健診)の要フォロー判定率(支援が必要であると判断された割合)は高く,令和3年度は81.6%であった。要フォロー判定率の中でも特に「言葉」に関するフォロー(言葉の発達支援。以下,「言葉」フォロー)率が高く,令和3年度は71.9%であった。そこで,1歳半健診の「言葉」フォローの実態を明らかにするため,平成31年4月~5月生まれの1歳半健診と3歳児健診を受診した幼児を対象とし,健診のアンケートや児のカルテから1歳半健診での要フォロー判断の妥当性の分析を行った。その結果,1歳半健診で「言葉」フォローとなった児のうち,3歳児健診でも「言葉」フォローとなった児は17.0%であった。また,1歳半健診のアンケートに記載している有意語数が3語以上であれば,3歳児健診で「言葉」フォローでない割合が97.5%という結果となった。以上より,1歳半健診の要フォロー判定率を低下させるために,今後は「言葉」フォローの判断基準を明確化し,より効果的な支援方法を検討する必要がある。

  • 日比野 瑞歩, 李 媛英, 宋 澤安, 髙田 碧, 洪 英在, 福田 知里, 王 爽, 桶川 龍世, 西尾 七海, 服部 優奈, 太田 充彦 ...
    2025 年12 巻2 号 p. 135-142
    発行日: 2025/03/01
    公開日: 2025/03/01
    ジャーナル フリー

    目的 中部地方の自治体職員を対象に,朝食欠食と5年後の抑うつ状態発症との関連を,愛知職域コホート研究のデータを用いて検討することを目的とした。

    方法 愛知職域コホート研究の2013年のベースライン調査に参加した20-54歳の対象者のうちベースライン時に抑うつがない,あるいはうつ病の治療中ではない者のうち2018年調査にも参加した2004人 (男性1452人,女性552人)を研究対象とした。抑うつ状態の評価はCenter for Epidemiologic Studies Depression Scale日本語短縮 (11項目)を使用し,8点以上を抑うつとみなした。朝食欠食は朝食摂取頻度が週6回以下と定義した。さらに,5年間の朝食欠食の変化を「非欠食 (2013年)→非欠食 (2018年)」,「欠食→非欠食」,「非欠食→欠食」,「欠食→欠食」の4パターンに分けた分析も実施した。多変量ロジスティック回帰分析を用いて,性 (男性,女性[閉経前],女性[閉経後]),年齢,学歴,配偶者・14歳未満の子供の同居の有無,肥満 (BMI≧25 kg/m2),喫煙状況,運動頻度,アルコール摂取量,睡眠時間,ストレス,ファミリー・ワーク・コンフリクト,ワーク・ファミリー・コンフリクトを調整し,2018年の抑うつ発症のオッズ比 (OR)と95%信頼区間 (CI)を推定した。

    結果 2018年に新たに抑うつ状態となったのは261人 (13%)であった。朝食欠食と抑うつ発症には調整要因に独立した統計学的に有意な正の関連が認められた (OR: 1.39,95%CI: 1.01-1.90)。朝食欠食の変化パターン別の分析でも「非欠食→非欠食」群に比べて「欠食→欠食」群は抑うつ発症と有意な正の関連を示した (OR: 1.53,95%CI: 1.06-2.21)。

    結論 朝食欠食と抑うつ発症には調整要因に独立した正の関連が認められた。

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