東海公衆衛生雑誌
Online ISSN : 2434-0421
Print ISSN : 2187-736X
最新号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 尾関 佳代子, 尾島 俊之
    2022 年 10 巻 1 号 p. 79-84
    発行日: 2022/07/02
    公開日: 2022/08/05
    ジャーナル フリー

    目的 2019年末から始まった新型コロナウイルス感染症の流行に伴い, 医師の診療, 処方薬の受け取りに関し, 電話または通信機器を利用した新たな対応が取られた。それに伴う薬局でのコロナ禍における遠隔服薬指導の状況を把握することを目的とした。

    方法 2020年9月から10月に, 浜松市・湖西市内の全保険薬局を対象として, 調査票を郵送し, 管理薬剤師等に記入を依頼した。調査内容は「遠隔服薬指導を可能とする新型コロナウイルス感染症に関連した0410対応に基づいた処方箋の受付の有無」,「在宅訪問の有無」,「オンライン服薬指導関連事項」等とし, 回答の単純集計を行った。また「オンライン服薬指導の広がりの推測の有無」,「地域薬局営業状況の閲覧可能システムの希望の有無」及び「年齢」と「自薬局でのオンライン服薬指導実施」について, クロス集計及びPearsonのカイ二乗検定を行い, 検討した。

    結果 293薬局より回答があった (回収率76.7%)。遠隔指導が可能な0410対応に基づいた処方箋を受付けたことのある薬局は68.9%であったが, 遠隔服薬指導を行った薬局は25.2%で, 全て電話による対応であった。在宅患者の居宅療養管理対象処方箋を受付けたことのある薬局は62.3%であったが, 定期的に在宅訪問を行っている薬局は37.8%であった。自薬局でのオンライン服薬指導実施に関しては, 積極的な薬局が41.5%, 消極的な薬局が58.5%であった。今後のオンライン服薬指導の広がりの推測に関しては, 「広がる」と回答した薬局は49.8%であった。オンライン実施に積極的な薬局は主な理由として「患者の感染リスク減」,「患者の負担減」等の回答が多く, 消極的な薬局は「オンライン対応のためのソフトツールなし」や「指導がうまく伝わっているかが心配である」等の回答が多かった。また「自薬局でのオンライン服薬指導実施に積極的」に有意に関連していたのは「オンライン服薬指導の広がりの推測あり」と「地域薬局の営業状況の閲覧可能システムの希望あり」であった。

    結論 オンライン診療後に発行された処方箋を受け取った薬局は約7割とかなり多かったにもかかわらず, 遠隔対応で服薬指導した薬局は4分の1程度に留まり, 患者や家族及び代理人が薬を入手するために薬局まで出向き, 対面による指導を選択していることが考えられた。オンラインを利用する患者が最終的に薬を入手するためには, いくつかのルートが考えられるが, オンライン服薬指導を選択することは, 患者, 薬局双方の背景・状況を鑑み, メリットもデメリットも存在することが明らかとなった。

  • 平野 有希子, 平川 仁尚, 江 啓発, 八谷 寛
    2022 年 10 巻 1 号 p. 85-94
    発行日: 2022/07/02
    公開日: 2022/08/05
    ジャーナル フリー

    目的 新型コロナウイルス (SARS-COV-2) の感染拡大初期に医療・介護・福祉の現場で起きた課題の構造を整理することは, 今後直面する可能性がある新たな新興感染症への対策策定の第一歩として有用と考えられる。本研究では, 2020年4~5月頃の新型コロナウイルス感染拡大の初期段階における地域の医療・介護・福祉の現場の課題とその構造を実務者の言説の質的分析を通して明らかにすることを目的とした。

    方法 医療・介護・福祉従事者27名を対象に2020年4月から5月にオンラインインタビュー調査を実施した。インタビューガイドを用いた半構造化インタビューとし, 自由回答形式で行った。録画したインタビュー内容から逐語録を作成し, テキストデータを質的内容分析により分析した。

    結果 質的内容分析の結果, 126種類の意味単位が抽出された。グループ化により, (1) 不足する情報・十分でない情報共有に対する不安や不満, (2) 業務ならびに社会からの差別に対する心身の疲労, (3) 孤独と貧困に対する対応, (4) 感染予防対策における困難さ, の4テーマが抽出された。

    結論 本研究の結果から, 新興感染症拡大初期の現場で, 医療資材の不足だけでなく信頼性が高い情報の不足が特に深刻であった。また, 初期に限定した課題ではないが, 医療者の心身の疲労軽減, 孤独や貧困に対する生活支援も重要であった。

  • 中島 正夫, 三田 有紀子
    2022 年 10 巻 1 号 p. 95-104
    発行日: 2022/07/02
    公開日: 2022/08/05
    ジャーナル フリー

    目的 若年女性の痩せ志向の改善や不必要・不適切な体重減量行動 (以下「ダイエット」という。) の予防に向け, 2017年3月に告示された学習指導要領等に基づいて作成された小学校及び中学校用「保健」「家庭」等教科書における「痩せ」に関連する記載内容を明らかにし, そのあり方について検討することである。

    方法 文部科学省教科書目録 (令和2年4月) に掲載されている2017年に告示された学習指導要領等に基づき作成された小・中学校用「保健」「家庭」等の教科書における, 「適正なボディイメージの形成」や「ダイエットによる健康障害」などの「痩せ」に関連する記載内容を抽出, 旧学習指導要領等に基づいて作成された教科書の記載内容と比較するなどしてそのあり方を検討した。

    結果 小学校3・4学年用教科書 (保健5冊) において, 「思春期の体型の変化」「生活習慣と健康」「適正なボディイメージの形成」は全てで記載されていたが, 「ダイエットによる健康障害」について記載されていたのは2冊であった。小学校5・6学年用教科書 (保健5冊・家庭2冊) において, 「生活習慣と健康」以外の記載はなかった。中学校用教科書 (保健体育4冊・家庭分野3冊) において, 「ダイエットによる健康障害」は保健体育全てで, 家庭分野では1冊で記載されていた。また, 「若年女性の痩せ志向」と「適正なボディイメージの形成」はそれぞれ保健体育3冊で記載されていた。なお, 改正された学習指導要領で示された「思考力, 判断力, 表現力等」などに関連し, 課題として「痩せ」を明確に取り上げた教科書はなかった。

    結論 若年女性の痩せがわが国の重要な健康課題となっているにも拘わらず, 学習指導要領・学習指導要領解説での「痩せ」に関連する記載内容は変更されない中, 小学生及び中学生を対象とした新しい教科書での「痩せ」に関する記載内容は原則拡充されておらず, むしろ一部簡略化されていた。特に小学校5・6学年用教科書では「痩せ」について明確な記載はなかったこと, また中学校学習指導要領では「生活習慣病などの予防」は第2学年で取り扱うとされていることから, 思春期の始まりの時期に「痩せ」に関する健康教育が十分行われない可能性がある。今後文部科学省が特に小学生を対象とした教科書での「痩せ」に関連する記載が拡充されるための措置を講じることなどが強く望まれる。

  • 森岡 菜穂子, 纐纈 朋弥, 石原 多佳子, 中塚 美帆, 小林 和成
    2022 年 10 巻 1 号 p. 105-111
    発行日: 2022/07/02
    公開日: 2022/08/05
    ジャーナル フリー

    目的 後期高齢者の在宅療養移行時における服薬支援に要する訪問看護師が認識する情報を明らかにすることである。

    方法 岐阜県訪問看護ステーション連絡協議会に加入する143事業所の訪問看護師 (非常勤含む) に, 無記名自記式質問紙調査を実施し, 59か所の事業所の180人から回答を得た (回収率56.6%)。調査内容は個人属性, 事業所属性, 一般的な後期高齢者の服薬に対する情報の認識40項目である。分析は単純集計, 及び項目分析として天井効果・床効果, 相関係数を確認した上で, 固有値が1以上のガットマン・カイザー基準に基づく因子分析 (重みなし最小二乗法・プロマックス回転) により, 訪問看護師が認識する情報を検討した。

    結果 有効回答177人分を分析対象とした (有効回答率98.3%)。調査対象者の性別は「女性」が97.2%, 平均年齢は48.4±8.2歳であった。訪問看護師の通算経験年数は「1~4年」33.3%, 「5~9年」29.9%であった。服薬指導を行った経験は「あり」が92.1%であった。事業所の概要として, 服薬指導マニュアル, 及び服薬指導に関する研修は「なし」が各々約8割であった。項目分析, 因子分析の結果, 25項目から構成される5因子は全て固有値が1以上で妥当な因子構造であることを確認した。因子は既存のカテゴリーと項目の構成を参考に, 〔後期高齢者の服薬の理解・意向状況〕・〔後期高齢者の服薬の動作・習慣〕・〔後期高齢者の服薬を取り巻くADL・生活状況〕・〔後期高齢者の服薬への主介護者・家族等の支援状況〕・〔後期高齢者の服薬する生活環境〕と命名した。因子間相関はr=. 459~. 645で中程度の正の相関が確認された。Cronbachのα係数は尺度全体で. 947, 各因子では. 765~. 937の値を示し, 内的整合性は担保されていた。

    結論 後期高齢者の在宅療養移行時における服薬支援に要する訪問看護師が認識する情報は, 本研究の仮説設定時における構成とほぼ一致していた。一方, 訪問看護師が後期高齢者の服薬支援の際に意識的に収集していない情報も一部認められた。訪問看護師が認識する情報は『ADL・服薬行動』が最も高く, 『ADL・服薬行動』や『環境』の情報収集をしながら, 同時に『理解・意向』の後期高齢者の服薬管理能力や認知レベル等の情報も収集していた。

  • ― 市町村と地域包括支援センターの立場から ―
    岡本 名珠子, 小林 和成, 纐纈 朋弥
    2022 年 10 巻 1 号 p. 112-120
    発行日: 2022/07/02
    公開日: 2022/08/05
    ジャーナル フリー

    目的 本研究の目的は, 市町村と地域包括支援センター (以下, 地域包括) におけるセルフ・ネグレクト独居高齢者に対する早期発見・早期対応の支援の現状と課題を明らかにすることである。

    方法 東海三県の市町村125か所・地域包括379か所 (合計504か所) 所属のセルフ・ネグレクト独居高齢者に関わった職員に, 質問紙調査を実施した。研究期間は2019年11月~2020年1月であり, 調査項目は, 研究対象者の基本属性 (以下, 基本属性) 10項目, 早期発見・早期対応の支援 (以下, 支援項目) 21項目の合計31項目とした。分析方法について, 基本属性は, 各調査項目の基本統計量を算出, 支援項目は, 支援の程度を「1 : 全く行っていない (1点)」-「5 : いつも行っている (5点)」で得点化, 市町村・地域包括別に平均得点±標準偏差, 中央値の差を比較した。中央値の差の検定はMann-WhitneyのU検定を用い, 有意水準は5% (両側) とした。

    結果 有効回答 (有効回答率) は, 市町村42か所42名 (33.6%), 地域包括138か所260名(36.4%) であった。支援項目について, 早期発見で平均得点が最も高かったのは, 市町村は「(8)背景を探りながら関わる (3.8±1.2点)」, 地域包括は「(7)身体状態などを推測する (4.2±0.8点)」であった。最も低かったのは「(1)知識を地域住民に啓発する」(市町村1.9±0.9点, 地域包括2.0±0.9点) で市町村・地域包括ともに共通していた。早期対応の支援において, 平均得点が最も高かったのは, 市町村は「(14)拒否されても継続して関わる (3.5±1.2点)」, 地域包括は「(11)予後を予測して支援を行う (3.9±0.9点)」であった。最も低かった支援項目は, 市町村は「(21)引き継ぐ事業者を選定する (2.7±1.3点)」, 地域包括「(18)近隣住民に支援に協力してもらう (2.9±1.0点)」であった。市町村のうち, 「管内地域包括が直営のみ (以下, 直営のみ)」と「管内地域包括が委託あり (以下, 委託あり)」で比較すると, 「(20)担当ケアマネの支援をする (p=0.026)」, 「(21)サービス事業者を選定する (p=0.022)」は, 直営のみが委託ありより有意に得点が高かった。地域包括のうち, 直営型と委託型で比較すると, 「(9)あなたは支援が必要な状態だと伝える」(直営型3.6±1.1点, 委託型3.2±1.0点 p=0.032), 「(14)拒否されても継続して関わる」(直営型4.2±1.0点, 委託型3.8±0.8点 p=0.003) の得点は, 委託型より直営型が有意に高かった。

    結論 セルフ・ネグレクト独居高齢者の支援に関して, 地域住民の協力を得ながら情報を把握し, 見守り体制を整える支援は, 市町村, 地域包括ともに課題があった。セルフ・ネグレクト独居高齢者への支援として, 地域包括の「個別」支援に加え, 市町村の分野横断的な「地域」に対する支援の必要性が示唆された。

  • 田中 克弥, 田辺 百合香, 栗木 清典
    2022 年 10 巻 1 号 p. 121-125
    発行日: 2022/07/02
    公開日: 2022/08/05
    ジャーナル フリー

    目的 伊東市における心筋梗塞発症者の特定健康診査結果を分析し, 今後の保健活動を講じるうえでの基礎資料とすることを目的とする。

    方法 回顧的コホート研究として, 平成27年度から令和元年度までの5年間に, 新規で心筋梗塞を発症及びその後死亡した者を抽出し, 発症率及び死亡率を算出した。さらに, 特定健康診査の受診の有無による発症及び死亡に及ぼす影響について検討した。また, 症例対照研究として, 心筋梗塞発症者のうち特定健康診査結果のある者を症例群, 非発症者で特定健康診査の結果のある者を対照群とし, 各検査項目について比較した。

    結果 回顧的コホート研究より, 追跡期間中に心筋梗塞を発症したのは47人で, そのうち, 存命者は32人, 死亡者は15人であった。追跡期間中における10万人年対の心筋梗塞発症率は40.4, 心筋梗塞死亡率は12.9であった。追跡期間中に特定健康診査の受診歴のあった16人 (すべて存命者) と受診歴のなかった31人には, 特定健康診査の受診による心筋梗塞発症のリスクに有意な差はみられなかった。なお, 死亡者15人のうち, 15人全員に追跡期間中における特定健康診査の受診歴はなかった。

     症例対照研究より, 心筋梗塞発症の症例群のHDLコレステロールは, 非発症の対照群と比較して, 有意でないものの低い傾向にあった。同様に有意差はなかったが, 症例群のHbAlc, eGFR, BMI, 血清クレアチニンの各値は悪い傾向にあった。

    結論 特定健康診査の受診の有無は生命予後を左右する可能性や, 心筋梗塞の発症を機に健康意識の向上が図られた可能性を示唆したことから, 特定健康診査の未受診者層や3年以上受診をしていない層といった健康意識の高くない市民へ, 健康意識を向上させ, 健康診査の受診の習慣化を図る必要性が確認できた。心筋梗塞発症者に特徴的な特定健康診査結果に有意差がみられなれなかったことから, 今まで以上に特定健康診査の未受診者に受診勧奨をするとともに, 心筋梗塞の発症を一次予防するポピュレーションアプローチの重要性が確認された。

  • 長谷川 寿美枝, 徳留 裕子, 須崎 尚, 伊藤 勇貴, 安友 裕子, 藤木 理代, 由田 克士
    2022 年 10 巻 1 号 p. 126-135
    発行日: 2022/07/02
    公開日: 2022/08/05
    ジャーナル フリー

    目的 地域高齢者の唾液分泌量と口腔機能, 心理的状況ならびに食生活との関連について検討する。

    方法 対象者は2014年7月~2015年9月の間に, 愛知県N市介護予防教室に参加した52名 (65歳以上の男女) である。調査内容は身体測定 (身長, 体重・骨格筋量, 下腿周囲長, 握力), 口腔機能[咬合力, 咀嚼力, 反復唾液嚥下テスト (RSST), 唾液分泌量], 心理的状況[老年期うつ病評価尺度 (GDS-15), 主観的健康感, 高齢者の主観的幸福感(PGCモラールスケール)], 食生活[簡易栄養状態評価(MNA®), シニア向け食欲調査(CNAQ-J), 食物摂取頻度調査(FFQg ver.3.5)]である。唾液分泌量減少群 (0.5mL/min未満) と正常群 (0.5mL/min以上) の2群間比較を行った。連続変量はMann-Whitney U検定, 離散変量2×2表についてはχ2検定を行った。唾液分泌量と各指標との相関はSpearman順位相関係数を用いた。有意水準はp<0.05 (両側) とした。

    結果 唾液分泌量のデータがない3名を除いた49名 (男性20名, 女性29名) を解析対象とした。年齢74.0 (72.0-77.0) 歳[中央値 (四分位範囲)], BMI 23.0 (20.3-24.6) kg/m2, 唾液分泌量0.74 (0.46-1.03) mL/minであった。26.5% (13名) に唾液分泌減少がみられた。唾液減少群と正常群の2群間比較では, 咬合力, GDS-15, PGCモラールスケール, CNAQ-J, 菓子類摂取量に有意差がみられ, χ2検定で有意だったのは, 口腔乾燥感, うつならびに食欲の有無, 主観的健康感の良否であった。唾液分泌量と身長, 下腿周囲長, 咬合力, たんぱく質, 亜鉛, 菓子類摂取量の間に有意な相関関係がみられた。

    結論 唾液分泌量は, 咬合力, 口腔乾燥感, 心理的状況 (うつ, 主観的健康感, 主観的幸福感), 食生活状況 (食欲, たんぱく質・亜鉛・菓子類摂取量) などとの関連が示唆された。

  • ―35歳以上の高年初産婦に焦点を当てて―
    立山 美子
    2022 年 10 巻 1 号 p. 136-141
    発行日: 2022/07/02
    公開日: 2022/08/05
    ジャーナル フリー

    目的 高年妊婦は, 妊娠, 出産, 育児の面で問題があり, 地域母子保健分野において, 継続支援が必要な対象者であると考える。今回, 35歳以上の高年妊婦のうち初産婦に焦点を当て, 妊娠届出時の面接からハイリスク妊婦として見極め, 継続支援が必要である視点を明らかにする。

    方法 高年初産婦をキーワードに2000年~2021年CiNiiによる文献等を検索し, 高年初産婦の身体面, 精神面, サポート面に関連する23件の文献を採用した。

    結果 高年妊婦は, 出産後睡眠時間が短いことや睡眠効率も悪いことが明らかとなっており, 妊娠届出時に睡眠時間や睡眠の質について確認することは, 妊娠から出産後の身体面だけでなく精神面の支援にもつながることが示唆された。また精神面では, 20~34歳の初産婦と比較し, 育児不安やエジンバラ産後うつ病質問票得点が, 出産後, 1か月と有意に高かったことが明らかになっており, 妊娠中の精神状態や既往歴に着目する必要性が示唆された。サポート面では夫の支援は得られながらも満足できる支援には社会資源の活用が有効であると示唆されていた。

    結論 妊娠届出時の面接から支援が必要である見極めの視点として, 高年妊婦の場合は, 精神面に着目し, 身体面, サポート面も含め妊娠中より継続支援していく必要性が示唆された。

  • 二村 純子, 坂本 真理子
    2022 年 10 巻 1 号 p. 142-149
    発行日: 2022/07/02
    公開日: 2022/08/05
    ジャーナル フリー

    目的 自治体において健康づくり推進員組織の育成・支援を行っている保健師が, 男性推進員の活動をどのように認識し, 支援しているかを明らかにすることを目的とした。

    方法 政令指定都市を除く東海4県157自治体の健康づくり関連部署において, 推進員組織を担当する保健師の代表者各1名を対象に, 無記名自記式質問紙調査を実施した。男性推進員数や年代別人数に加えて, 男性推進員の活動に関する保健師の認識と支援について, 有無と内容を選択式または自由記載にて把握した。

    結果 90自治体から回答が得られ, 推進員組織を有する自治体は51か所であり, そのうち男性推進員が存在したのは38か所であった。各自治体の推進員数の合計は5,627名で, 男性推進員は822名 (14.6%) であった。男性推進員が存在する自治体の保健師が持つ男性推進員の活動への認識に関して, 「ある」に該当した割合は, 「男性推進員の強みの認識」63.2%, 「男性推進員と女性推進員の活動への取り組み方の違いの認識」31.6%, 「男性推進員がいることによる活動への影響の認識」81.6%であった。「男性推進員の強み」として, 牽引力や論理的な思考, 行動力, 責任感の強さのほか, 自治体とのつながりが挙げられた。また, 男性推進員の活動への支援に関して「ある」に該当した割合は, 「男性推進員を支援するうえでの困難感」26.3%, 「男性推進員がいるグループへの配慮や工夫」13.2%, 「男性推進員を募るための行動」23.7%であった。

    結論 保健師は男性推進員を, 活動を牽引する力や自治会とのつながり等の強みをもって, 推進員活動を拡充させる存在として認識していた。多様化する健康課題の解決に向けて, 職域から地域に移行する男性たちに, 健康づくり分野の活動の意義や成果, 活動の魅力を効果的に示し, 健康づくりの担い手を確保していく必要がある。

  • 上田 規江, 竹内 浩視, 尾島 俊之
    2022 年 10 巻 1 号 p. 150-159
    発行日: 2022/07/02
    公開日: 2022/08/05
    ジャーナル フリー

    目的 今後の少子高齢化の進展に伴う人口構造の変化を見据え, 地域医療構想の達成に向けた医療・介護提供体制の整備は喫緊の課題である。本研究は, 医療・介護需給状況の地域間比較を通じて, 東海地方4県の特徴や課題を明らかにすることを目的とする。

    方法 本研究の対象とした東海地方4県を説明変数とし, 医療・介護需給にかかわる一人当たり医師数指数, 一人当たり看護師数指数 (以上, 2017年), 一人当たり急性期医療密度指数, 一人当たり慢性期医療密度指数 (以上, 2018年), 介護充足度指数 (2015・2040年) の6指標を目的変数として, 一元配置分散分析を行った。また, 東海地方4県の二次医療圏を人口および人口密度を考慮して分類し, 同様の検定を行った。データは, 2015年国勢調査人口等基本集計, 日本の地域別将来推計人口平成30年 (2018年) 推計, 医療施設 (動態) 調査, 日本医師会地域医療情報システム等から引用した。

    結果 東海地方4県の医師数指数0.8 (標準偏差 (以下 SD) : 0.19) および看護師数指数0.87 (SD : 0.13) は全国平均を下回り, 2015年介護充足度指数 (岐阜県-7.1, 静岡県4.6, 愛知県-16.0, 三重県-2.3 : p=0.025) および2040年介護充足度指数 (岐阜県-31.3, 静岡県-21.3, 愛知県-71.5, 三重県-20.4 : p=0,007) では地域差が認められた。東海地方4県の二次医療圏は, 大都市型医療圏4圏域, 地方都市型医療圏20圏域, 過疎地域型医療圏4圏域に分類され, 地方都市型医療圏では看護師数指数, 急性期医療密度指数, 慢性期医療密度指数, 2015年および2040年介護充足度指数に地域差が認められた。過疎地域型二次医療圏では医師数指数が全圏域で各県の平均を下回り, その他の指標は圏域ごとに異なる特徴がみられた。

    結論 東海地方4県では, 医師と看護師が少なく, その確保が共通の課題であった。一方, 医療・介護提供体制には地域差を認めたことから, 各県・二次医療圏の特徴を踏まえつつ, 住民の受療行動や生活様式の変化等を加味した対策を講じる必要性が示唆された。

  • アンケート調査データによる地域特性等の検討
    武田 彩希, 小野 好美, 東郷 三四郎, 高杉 友, 尾島 俊之
    2022 年 10 巻 1 号 p. 160-165
    発行日: 2022/07/02
    公開日: 2022/08/05
    ジャーナル フリー

    目的 X市で実施されたアンケート調査データを解析し, 二次予防および三次予防事業の対象者の多いA地区の地域特性を定量的に明らかにし, 前期高齢者の主観的健康感に影響する因子を検討することを目的とした。

    方法 X市の前期高齢者を対象に2021年2~3月に健康と暮らしに関するアンケート調査が行われた。この匿名データを用い, X市内で健康課題の大きなA地区での種々の地域特性, さらに男女別の状況について検討した。また, X市全体での男女による健康状態等の差を検討した。さらに, 主観的健康感に関連する因子について重回帰分析により検討した。

    結果 分析対象者は2,677名であった。A地区はその他の9区と比較して, 主観的健康感, 運動機会・機能, ソーシャルキャピタルが有意に低かった。また, A地区の女性は特に主観的健康感が低い人が多く, 運動機会・機能が低いこと, A地区の男性は特に他人と食事する機会は多く, ボランティア参加者が少ない結果であった。

    結論 A地区では特に主観的健康感の低い人が多く, ソーシャルキャピタルが低いこと, 主に女性の運動機会が少ないことと関連する可能性が示唆された。

  • He Yupeng, 江 啓発, 藤社 紗梨, 水野 晴子, 平川 仁尚, 八谷 寛
    2022 年 10 巻 1 号 p. 166-179
    発行日: 2022/07/02
    公開日: 2022/08/05
    ジャーナル フリー

    目的 特定健診とレセプトの分析に基づき保健事業の効果や効率を高めていくこと (データヘルス計画) が保険者には求められているが、課題設定や被保険者への情報提供に資する実態把握には特定健診受診率や有所見者割合、高額医療費者数等の横断的な検討が中心である。そこで本研究は、愛知県岩倉市国民健康保険 (国保) 加入者の特定健診とその後の経年的なレセプト情報を突合したコホート研究データを用い、心血管疾患発症リスクおよび人口寄与危険割合の推定を試みた。

    方法 岩倉市国保加入者のうち、2013年から2018年までの5年間に特定健診を1回以上受診した者を対象とし、最初の受診年をベースラインとした。ベースライン以前に心血管疾患の既往歴のある者および問診データに欠損値の多い者を除外した6,496名 (男性2,722名、女性3,774名) を解析対象とした。レセプト情報を用いて追跡期間中の心血管疾患の発症を把握し、特定健診結果から把握した危険因子と全心血管疾患、心筋梗塞、脳卒中の関連を性・年齢および危険因子を相互に調整したCox比例ハザードモデルで検討した。また、多変量調整ハザード比(HR)と発症者における危険因子の割合から人口寄与危険割合を推定した。

    結果 解析対象者のベースライン時平均年齢は62.5歳であった。追跡期間中の全心血管疾患、心筋梗塞、脳卒中の発症者数はそれぞれ149名、58名、91名であった。女性に比し男性 (HR : 2.0、95%信頼区間 (CI) : 1.4-2.8)、非現喫煙者に比し現喫煙者 (HR : 1.7、95% CI : 1.1-2.5) は心血管疾患発症リスクが約2倍高かった。非高血圧に比しI度およびII度以上高血圧の心血管疾患発症のハザード比はそれぞれ1.7 (95% CI : 1.1-2.4)、2.3 (95% CI : 1.5-3.5) であった。また、糖尿病 (HR : 2.3、95% CI : 1.4-3.9)、メタボリックシンドローム該当者 (HR : 1.6、95% CI : 1.1-2.3) ともに約2倍の心血管疾患発症リスクと関連した。心血管疾患の人口寄与危険割合は高血圧 (I度以上) で27.2%と最も高く、次いで喫煙11.3% メタボリックシンドローム10.5%、糖尿病10.2%であった。

    結論 高血圧、喫煙、糖尿病、メタボリックシンドロームは性、年齢、その他の危険因子に独立して心血管疾患発症リスク上昇と有意に関連した。心血管疾患の人口寄与危険割合は高血圧で最も高かった。

  • 洪 英在, 平川 仁尚, 犬飼 麻里子, 水野 晴子, He Yupeng, 江 啓発, 八谷 寛
    2022 年 10 巻 1 号 p. 180-186
    発行日: 2022/07/02
    公開日: 2022/08/05
    ジャーナル フリー

    目的 適切に血圧がコントロールされている人を増やすためには, コントロール不良の高血圧症患者に焦点を当て, その要因を明らかにする必要がある。高血圧症は無症候性であることが多いため, 患者本人の疾患や治療に関する認識への働きかけを行うことが重要であるが, そうした研究は少ない。本研究は, 健診でII度以上の血圧高値を指摘された高血圧患者 (すなわち, 良好なコントロール状態にあるとは判断されない高血圧症患者) の疾患と治療に対する認識や態度を探索することを目的とした。

    方法 対象者は, 愛知県岩倉市が2019年度, 2020年度, 2021年度に実施した特定健診受診者の中から, 一度でも収縮期血圧160mmHg以上または拡張期血圧100mmHg以上であった300名に対して研究参加を呼び掛け, 同意が得られた13名とした。データ収集は1回約30分間の1対1の半構造化面接により行われた。データ分析は, 質的内容分析により行われた。

    結果 対象者の性別は女性5名, 平均年齢は69.2歳 (60-74歳) であった。2名がBMI 25kg/m2以上の肥満であったがBMI 35kg/m2以上の高度肥満は存在しなかった。13名ともに高血圧症での医療機関通院歴を有し, 8名がかかりつけ医から降圧剤を処方されていた。質的分析の結果, 高血圧に対するイメージ, 治療に関する認識, ピアから受ける影響, 患者からみたかかりつけ医の診療姿勢, 実際に行動変容することの難しさ, の5テーマが抽出された。対象者の中には, 高血圧症に対して重大性を認識していないか, 生活習慣改善に向けて行動を起こすメリットを感じていないようであった。また, 降圧剤について, 必要性を感じず, 副作用を危惧していた。こうした認識は, ピア, つまり同じ疾患を持つ家族・同僚や, かかりつけ医の診療姿勢から影響を受けていた。

    結論 コントロールが良好でない可能性がある高血圧症患者の疾患と治療に対する認識と態度として, 行動変容の準備性の低さ, 治療内容に関する否定的な認識, ピアからの影響の大きさ, かかりつけ医の診療姿勢への転嫁的態度が存在する可能性があると考えられた。

  • 杉山 眞澄, 鈴木 知代, 深江 久代, 伊藤 純子
    2022 年 10 巻 1 号 p. 187-195
    発行日: 2022/07/02
    公開日: 2022/08/05
    ジャーナル フリー

    目的 本研究は, 市区町村の母子保健担当部署における管理的立場の保健師が経験するクレームの実態から課題を明らかにし, 管理的立場の保健師を対象としたクレームを活用した研修のあり方について検討する。

    方法 全国の市区町村の母子保健担当部署の管理的立場の保健師に, 郵送による無記名自己記入式の質問紙調査法で関わったクレームの件数や状況, 具体的な内容の他, クレーム対応と体制, クレームに関する考え, クレームの対応に関する課題・今後の対応などについての調査を行った。

    結果 1,918か所の市区町村に調査票を配布し, 528 (27.5%) から回答があった。過去1年間のクレーム「有」は, 357人 (67.6%) で, 保健事業の参加・利用者 (本人) が77.6%と最も多く, 申し立て方法は電話によるものが多かった (64.1%)。申し立ての場面としては, 乳幼児健康診査における保健師・栄養士等の専門職による対象者への支援場面が最も多く, 内容は発達の遅れに関連する保健師の支援に関するものや健診時開か長い等の保健事業の実施方法に関するものが多かった。

     クレームに関する職場の対応と体制として, 上司への報告は77.8%で実施されていたが, クレームに関するスタッフの研修がある (24.1%) やクレーム対応を分析して業務改善に活かしている (22.5%) という職場の割合は低かった。

    結論 クレームの多い場面や内容を分析し, 事業実施方法の見直し, 体制の整備や研修の実施の必要性があることが示唆された。

  • ―運動・食生活・社会参加の自由記述調査から―
    安岡 実佳子, 肥田 武, 藤川 寛之, 永谷 祐子, 川口 洋平, 黒柳 元, 上用 祐士, 坂井 宏章, 三井 祐人, 渡邉 良太, 渡 ...
    2022 年 10 巻 1 号 p. 196-202
    発行日: 2022/07/02
    公開日: 2022/08/05
    ジャーナル フリー

    目的 フレイルとは加齢に伴い心身の活力が低下した状態であり, 要介護の前段階と考えられている。関節リウマチ(RA)患者は, 慢性炎症により身体機能が低下しやすく, フレイルのハイリスク集団である。フレイル予防では, 運動, 栄養, 社会参加を促すことが重要と考えられている。本研究では,RA患者のフレイル予防を促す行動の継続に関連する要因を明らかにすることを目的とした。

    方法 RA外来患者を対象とした既存研究の参加者のうち, 新たに本研究協力への同意が得られた14人を参加者とした。2021年11月, 研究参加者に運動・食生活・社会のつながりに関する自由記述形式の質問票を郵送した。得られた回答から, フレイル予防やその継続に関連しうる行動・意識などをKJ法で分析した。

    結果 研究参加者の内訳は, 男性2人, 女性12人であり, 年齢は50歳代が2人, 60歳代が4人,70歳代が6人, 80歳代が2人であった。運動を継続する要因として,【目標設定・保持】,【生活との連続性】,【持続可能な動機付け】が挙げられた。食生活で意識していることとして,【健康増進を促す適切な認識】,【フレイル予防を促す適切な認識】に加え,【フレイル予防を妨げる不適切な認識】も生成された。社会とのつながりについては,【“顔の見えない関係”での人との潜在的つながり】,【“顔の見える関係”での近距離の人との顕在的つながり】,【“顔の見える関係”での中距離の人との顕在的つながり】がみられた。

    結論 RA患者がフレイル予防行動を継続するにあたり, 自己効力感を維持することに加え, 症状に応じて負担を減らすことや, 計画通りに進まない場合であっても自分を責めないことといったRA患者の戦略が明らかになった。

feedback
Top