東海公衆衛生雑誌
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最新号
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  • -現状の困難と未来への展望-
    小島 香, 芳我 ちより, 野川 楓羽, 尾島 俊之
    2026 年13 巻2 号 p. 91-100
    発行日: 2026/03/16
    公開日: 2026/03/16
    ジャーナル フリー

    目的 本研究は,地域包括支援センター(センター)職員を対象に,センター内部における体制課題および地域における生活課題とその対応策,さらに今後の展望について明らかにすることを目的とした。

    方法 5か所のセンターに勤務する職員24名を対象に,フォーカスグループインタビューを実施し,内容分析を用いて分析した。

    結果 センター職員は,相談内容の複雑化や多職種連携の困難さなどの課題に直面していた。一方で,通いの場の運営や企業・地域との連携など,地域包括ケアの推進に向けた多様な取り組みも確認された。また,次世代型地域包括ケアを見据えた実践や,内省的な学びを重視した人材育成の必要性も明らかとなった。

    結論 センターは地域の多様なニーズに対応するため,柔軟な対応力と創造的な連携構築力が求められている。実践知を活かしつつ,住民や多様な地域主体との協働を推進することで支援の可能性が広がることが示唆された。今後は,持続可能な地域包括ケアの実現に向けて,地域との連携を基盤とした包括的な支援モデルと,職員の学びを支援する研修プログラムの開発が必要である。

  • 中野 愛子
    2026 年13 巻2 号 p. 101-108
    発行日: 2026/03/16
    公開日: 2026/03/16
    ジャーナル フリー

    目的 本研究では,大学生のスマートフォン利用におけるSNSに着目し,SNS使用頻度と食選択要因との関連及び,スマートフォン依存傾向と生活習慣との関連について男女別に検討することを目的とした。

    方法 愛知県内のA大学の食物系学科に在籍する学生(1~4年生)200名を対象に,無記名記述式アンケート調査を令和4年5月〜7月に実施した。解析にはIBM SPSS ver.27を用いた。

    結果 食選択要因について最尤法・プロマックス回転で因子分析を行い,「栄養」「イメージ」「他者の評判」「低カロリー」の4因子が抽出された。SNS使用頻度と食選択要因との関連では,「イメージ」に有意差が認められた。スマートフォン依存傾向と生活習慣との関連では男女で関連する因子に違いが見られた。男子では健康度,運動意識,ストレス回避,女子では食事,睡眠の規則性,睡眠の充足度の各因子得点において低依存傾向群であるⅠ群が最も高く,高依存傾向群であるⅢ群が低値を示した。

    結論 SNS使用頻度と特定の食選択要因に関連がみられた。また,スマートフォン依存傾向が生活習慣と関連することが示唆され,男女で関連する因子に違いが見られた。今後は対象者を拡大して調査を行うことで,より一般化可能な知見の広がりが期待される。

  • 三ケ日町アクティブエイジング研究
    中村 美詠子, 杉浦 実
    2026 年13 巻2 号 p. 109-116
    発行日: 2026/03/16
    公開日: 2026/03/16
    ジャーナル フリー

    目的 高齢者が地域で暮らし続けるためには日常生活に関わる活動の継続とウェルビーイングを保つことが重要と推定される。そこで本研究では地域在住中高年者を対象として,家事を中心とした日常生活の活動状況の性・年齢階級別の特性および活動状況とウェルビーイング等の関連を明らかにすることを目的とした。

    方法 静岡県浜松市北区三ケ日町(旧静岡県引佐郡三ケ日町)の基本健康診査受診者を対象として実施した三ケ日町研究の対象者にアンケート調査を実施した。日常生活に関わる能動的な活動状況を,改訂版Frenchay活動指標自己評価表を用いて測定し,性別,年齢階級別の得点を比較した。また主観的健康感,主観的幸福感,Simplified Japanese version of WHO-Five well-being index 日本語版(WHO-5 ウェルビーイング指標)との関連を,ロジスティック回帰分析,重回帰分析(年齢,病歴,家族構成を調整)を用いて検討した。

    結果 有効回答が得られた男性123人,女性299人を分析対象とした。改訂版Frenchay活動指標自己評価表合計点は,男性では年齢と有意な関連を示さなかったが,女性の70歳代以上は60歳代以下に比べ有意に低かった。領域別(屋内家事,屋外家事,戸外活動,趣味,仕事)得点は性・年齢階級で異なる傾向を示した。女性では,食事の用意,洗濯,仕事以外の多くの活動と主観的健康感,主観的幸福感,WHO-5 ウェルビーイング指標が有意な正の関連を示した。一方,男性では,主観的健康感,主観的幸福感と関連する活動は限定的であったが,WHO-5 ウェルビーイング指標と合計点,屋内家事(力仕事),屋外家事(買い物),戸外活動,趣味は有意な正の関連を示した。

    結論 中高年者において,改訂版Frenchay活動指標自己評価表で評価した日常生活活動状況,主観的健康感,主観的幸福感,WHO-5 ウェルビーイング指標との関連は,性により異なっていた。高齢者が地域で暮らし続けることが可能となる社会を目指すため,今後,性別特性をふまえて,ウェルビーイングの保持増進を目指した支援策を検討し,その効果を評価していく必要がある。

  • 津端 奈緒美, 生田 純子, 加藤 美緒, 大谷 隆浩, 西山 毅
    2026 年13 巻2 号 p. 117-126
    発行日: 2026/03/16
    公開日: 2026/03/16
    ジャーナル フリー

    目的 本研究では,精神疾患を有する精神科入院患者を対象に,低栄養該当群と非該当群との比較を行い低栄養の特徴を明らかにすることを目的とした。

    方法 2024年6月〜8月にA病院へ入院していた患者237名のうち,データの欠損がない181名を対象とした。データは診療録や入院時もしくは定期的な栄養スクリーニング・アセスメントから取得した。65歳未満にはMUST,65歳以上にはMNA-SFを用いた栄養スクリーニングを実施し,栄養リスクが認められた患者にはGLIM基準を用いて低栄養の診断を行った。対象者を低栄養該当群と非該当群に分類し,年齢,疾患,日常生活自立度,入院期間,喫食率,食形態,嚥下状態,精神症状などの要因について比較検討を行った。

    結果 対象者のうち27名(14.9%)が低栄養に該当した。疾患別では,統合失調症に比べて抑うつ症群および双極性障害関連症群における抑うつエピソードと認知症で,低栄養該当者の割合が有意に高かった(p<0.05)。低栄養該当者においては,過去3〜6か月間の体重減少率が5%以上の者,喫食率50%以下が2週間以上継続している者,食欲不振,希死念慮,不安感がある者の割合が高かった。また,1年未満の短期入院患者においても低栄養の割合が高かった。統合失調症では日常生活自立度の低下,抑うつ症群および双極性障害関連症群における抑うつエピソードでは精神症状に起因する食事摂取量の減少との関連がみられた。65歳未満では抑うつ症群および双極性障害関連症群における抑うつエピソードが,65歳以上では認知症に伴う摂食機能低下が低栄養と関連しており,年齢層によって低栄養の要因が異なることが示唆された。

    結論 精神疾患を有する精神科入院患者では,疾患の種類や症状,日常生活自立度,入院期間,食事摂取量など,さまざまな要因が低栄養に関与していることが示唆された。低栄養の早期発見と介入には,精神症状の把握だけでなく,食事状況や日常生活自立度を含む多面的な評価が重要である。

  • ―やせの労働者のメンタルヘルス―
    犬飼 勢津子, 豊田 将之, 榊原 久孝
    2026 年13 巻2 号 p. 127-135
    発行日: 2026/03/16
    公開日: 2026/03/16
    ジャーナル フリー

    目的 本研究では,職域における労働者のやせとうつの関連について検討した。

    方法 A県B市にある製造業C社に在籍する従業員2,923名のうち,「眠りと健康」に関する社員研修に参加した374名を対象に無記名自記式質問紙調査を実施した。参加者374名のうち,316名 (84.5%) が研究への参加に同意した。うつとの関連が指摘されている,悪性新生物,心筋梗塞,脳梗塞の既往を持つ場合や欠損値がある参加者36名を除いた280名 (88.6%) を分析対象とした。調査項目は基本属性,生活習慣,うつ,アテネ不眠尺度日本語版,睡眠状態とした。うつは日本語版二質問法を使用して判定した。質問紙に記載された身長と体重から体格指数 (Body Mass Index,以下BMI) を算出し,日本肥満学会判定基準を用いてやせ,普通,肥満の3群に分け,基本属性,既往歴,生活習慣,うつ,不眠の有無,睡眠時間について単純集計を行った。また,うつ及び不眠と基本属性,BMI,既往歴,生活習慣,睡眠時間についてロバスト分散を用いた修正版ポアソン回帰分析 (Modified Poisson Regression,以下修正ポアソン回帰分析) を行い,関連が強い項目を検討した。

    結果 基本属性では,やせの割合は6.4%,うつは20.7%であった。修正ポアソン回帰分析において,やせとうつは有意に関連しており,やせのうつとの相対リスク (Relative Risk,以下RR) は普通と比較して4.0 (95%信頼区間 (Confidence Interval,以下CI)=2.5-6.3,p<0.001) であった。また,やせと不眠の関連についても検討を行い,やせと不眠のRRは2.2 (95%CI=1.5-3.3,p<0.001) と,有意な関連が認められた。

    結論 これらの結果より,やせの者はうつを持つ可能性が高いと考えられる。同時に,やせの者は不眠も併せ持つことが多いことも示された。以上のことから,やせの労働者では,メンタルヘルスの不調のリスクを見落とさないように注意する必要があることが示唆された。

  • 森 尚義, 谷出 早由美, 城田 圭子, 柏木 翔和, 宮田 瑠里子, 浅野 香奈
    2026 年13 巻2 号 p. 136-142
    発行日: 2026/03/16
    公開日: 2026/03/16
    ジャーナル フリー

    目的 近年,三重郡菰野町では高齢者の救急搬送時における骨折の増加や,健康相談において途中覚醒や睡眠薬の服用に関する相談が多く寄せられており,転倒予防が地域保健における重要課題となっている。国民健康保険データベース(以下,KDB)の分析により,同町における睡眠薬の処方率および骨折に関連する医療費が県・全国平均を上回っていることが判明しており,転倒・骨折予防に向けた実態把握と介入の必要性が高まっている。本研究は,令和5年度後期高齢者健康診査の質問票データを用いて,転倒経験と関連する要因を明らかにし,地域における保健指導のあり方を検討することを目的とした。

    方法 令和5年度に菰野町で実施された後期高齢者健康診査の受診対象者5,765名(65~74歳の障害認定者を含む)を対象とし,KDBを用いて年齢,性別,直近の要介護度区分などの項目を抽出した。質問票の回答データから,属性,健康状態,生活習慣,認知・身体機能,服薬状況などの項目を抽出し,これらを独立変数,自己申告に基づく過去1年以内の転倒経験(転倒あり=1,なし=0)を従属変数としてロジスティック回帰分析を実施した。

    結果 有効回答者は2,360名で,平均年齢±標準偏差81.4±4.9歳,女性60.2%,後期高齢者の割合は99.8%であった。転倒経験者は456名(19.3%)であった。ロジスティック回帰分析の結果,「要介護度(支援・介護認定あり):OR(95%CI)=1.60(1.15-2.23)」「お茶や汁物等でむせる:OR(95%CI)=1.77(1.34-2.34)」「歩行速度が遅い:OR(95%CI)=1.57(1.20-2.05)」「物忘れがある:OR(95%CI)=1.77(1.35-2.34)」「外出頻度が少ない:OR(95%CI)=1.54(1.07-2.23)」の5項目に有意差が認められ,これらが転倒のリスク要因であることが示唆された。また,要支援・要介護認定を受けていない,自立群に限定した分析では多剤併用(6剤以上)が転倒のリスク要因であることが示唆された(OR(95%CI)=1.41(1.03-1.93))。

    結論 本研究により,地域高齢者の転倒リスクに関連する複数の生活機能指標が統計的に有意な関連を示すことが明らかとなった。特に,歩行速度の低下,嚥下機能の障害,認知機能の低下,外出頻度の減少は,転倒予防における重要な評価項目である。今後の地域保健活動においては,保健師による継続的な観察と支援を通じて,転倒リスクの早期把握および生活機能の維持に向けた介入を体系的に展開することが求められる。さらに,医師・薬剤師・介護職等との多職種連携を強化し,地域の実情に即した支援体制を構築することで,高齢者が安心して暮らせる地域環境の整備に資することが期待される。

  • 佐藤 清香, 佐藤 洋子, 田原 康玄
    2026 年13 巻2 号 p. 143-149
    発行日: 2026/03/16
    公開日: 2026/03/16
    ジャーナル フリー

    目的 高齢者における低体重は,総死亡や要介護認定のリスクを高める。保健施策に資する知見を得るため,静岡県における低体重高齢者の頻度と分布を明らかにすることを目的とした。

    方法 国民健康保険または後期高齢者医療制度に加入している静岡県在住の65歳以上高齢者249,774人を対象とし,県内39市区町ごとに低体重者(body mass index(BMI)18.5kg/m2未満)の頻度と分布を算出した。

    結果 対象者の平均年齢(標準偏差)は74.7(6.0)歳,男性が34.7%であった。平均BMI(標準偏差)は男性で23.3(3.2)kg/m2,女性で22.2(3.5)kg/m2であり,低体重者の頻度は全体で10.6%であった。その頻度は市区町ごとに8.4~14.9%と異なり,男性で2.6~8.5%,女性で10.2~17.8%であった。低体重者の頻度は県内の中西部の市町で高く,年齢階層別での検討でも同様の傾向を認めた。平均BMIが男女で異なったため,BMIが下位10パーセンタイル未満に該当した者の頻度についても同様に検討したが,低体重者の頻度と同様の結果であった。

    結論 県内在住の特定健診または後期高齢者の健診を受診した高齢者の約1割が,総死亡や要介護リスクが高い低体重高齢者であった。特に頻度の高い地域では,低体重高齢者に対する積極的な保健アプローチが望まれる。

  • 愛知職域コホート研究
    服部 優奈, 髙田 碧, 宋 澤安, 福田 知里, 西尾 七海, 近藤 寛, 保坂 唯仁, 松永 眞章, 太田 充彦, 玉腰 浩司, 大塚 ...
    2026 年13 巻2 号 p. 150-160
    発行日: 2026/03/16
    公開日: 2026/03/16
    ジャーナル フリー

    目的 朝食欠食や不適切な食事のタイミングは,多くの慢性疾患と関連することが報告されている。朝食摂取状況とその他の食事のタイミングは相互に影響し合うと考えられるが,我々の知る限り,両者を組み合わせて,慢性疾患との関連を検討した研究は存在しない。そこで本研究では,朝食摂取頻度と複数の食事のタイミングによって特徴づけられるクラスター間において,慢性疾患の有病率を検討することを目的とした。

    方法 中部地方の自治体職員を対象に2023年に実施した質問紙調査に参加した者から深夜勤務者を除外した4,339人を研究対象とした。食事のタイミングとして,1日の最後の食事摂取時刻から就寝時刻までの時間を「食事摂取から就寝までの時間」,1日の最初の食事摂取時刻から最後の食事摂取時刻までの時間の中間点を「食事の中間時刻」,1日の最後の食事摂取時刻から最初の食事摂取時刻までの時間を「夜間の絶食時間」と定義した。朝食摂取頻度は,対象者から得た回答を週当たりの回数「7/5.5/3.5/1.5/0.5/0(回/週)」に換算した。これら3つの食事のタイミングと朝食摂取頻度を指標として,k-means法により2つのクラスターを同定し,人数が多いクラスターを基準(クラスター1)として肥満,高血圧症,糖尿病,脂質異常症,抑うつ状態の有病率との関連を多変量調整ロジスティック回帰分析により検討した。また,クラスター同定の指標とした4つの変数それぞれを説明変数とした多変量調整ロジスティック回帰分析も行った。

    結果 クラスター1,クラスター2の人数はそれぞれ2,825人,1,514人であった。クラスター2は,クラスター1に比べ,朝食摂取頻度が低く,夜間の絶食時間が長く,食事摂取から就寝までの時間が長いという食事のタイミングの特徴を持っていた。クラスター間における多変量調整ロジスティック回帰分析の結果,肥満,抑うつ状態のオッズ比は,調整要因に独立して1よりも有意に高かった[肥満OR (95%CI):1.24 (1.04-1.48),抑うつ状態OR (95%CI):1.27 (1.11-1.46)]。一方,高血圧症,糖尿病,脂質異常症のオッズ比は1と有意な差がなかった。また,朝食摂取頻度,食事の中間時刻,食事摂取から就寝までの時間は,肥満または抑うつ状態と有意な関連を認めた。

    結論 朝食摂取頻度が低く,夜間の絶食時間が長く,食事摂取から就寝までの時間が長いという特徴を持つ群と肥満,抑うつ状態との間に有意な関連を認めた。

  • 樋口 怜彩, 池田 若葉
    2026 年13 巻2 号 p. 161-172
    発行日: 2026/03/16
    公開日: 2026/03/16
    ジャーナル フリー

    目的 国内外における高校生のメンタルヘルス問題に関する基礎知識を整理し, 今後の研究に発展させるため, 高校生のメンタルヘルス問題に影響を及ぼす要因について文献的検討を行い, 探索することを目的とした。

    方法 スコーピングレビューの方法論に基づいて行った。2013年から2023年までの期間に限定し, 医中誌WebとPubMedで検索した。対象となった論文を概観した上で, 高校生のメンタルヘルス問題に影響を及ぼす要因をテーマ分析によって段階性と関係性の2つの視点から整理した。

    結果 2204件の論文が検索され,このうち採用基準に合致した23件を分析対象とした。先行研究によると, 高校生のメンタルヘルス問題に影響を及ぼす要因として「学校環境」「家庭環境」「部活動」などの環境に関する要因と, 「ASD」「向社会的スキル」「ストレスに対する知識」などの自己に関する要因が示された。また, 「環境要因」と「自己要因」の双方に共通する要因として「孤独感」「人間関係」「学業」が明らかになった。

    結論 高校生のメンタルヘルス問題に影響を及ぼす要因についてスコーピングレビューにより検討した。その結果, 「学校環境」「家庭環境」「部活動」などの「環境要因」と, 「ASD」「向社会的スキル」「自己肯定感」などの「自己要因」が示された。また,「環境要因」と「自己要因」の双方に共通する要因として「孤独感」「人間関係」「学業」が明らかになった。近年, 高校生におけるメンタルヘルス問題は増加傾向にある。本研究は, 将来的な公衆衛生学研究の発展や, 日本における教育・福祉政策の立案に資する基礎資料として貢献することが期待される。

  • ソーシャルワークの文献検討
    牛塲 裕治
    2026 年13 巻2 号 p. 173-180
    発行日: 2026/03/16
    公開日: 2026/03/16
    ジャーナル フリー

    目的 精神疾患を抱える親と同居する子ども(Children of parents with mental illness: 以下COPMI)は,社会的孤立,貧困,自身の精神的健康問題など,多様な困難に直面するリスクが指摘されている。本研究の目的は,精神保健医療福祉領域のソーシャルワーカーによるCOPMI支援に関する知見を文献レビューに基づき整理し,今後の理論的・実践的課題を明らかにすることである。

    方法 文献レビューを以下の通り実施した。海外文献についてはPubMed,CINAHL,MEDLINE,Psychology and Behavioral Sciences Collection,日本語文献についてはCiNiiをデータベースとして用い,それぞれ「social work」「mental health」「child of impaired parents」,「精神疾患のある親」「精神障害のある親」を検索語とし,COPMI支援のテーマの抽出・整理を行った。

    結果 7件の論文が選定され,COPMI支援に関与するソーシャルワーカーに関する記述はあったが,ソーシャルワークの実践や理論を中心に議論している研究は少なかった。COPMI支援全般における主要テーマとして,「子どもに焦点を当てた支援」「家族単位の支援」「知識」「ツール・体制」「連携」の5つが抽出され,ソーシャルワークの基本原理である「人と環境の相互作用」と関連する可能性が示唆された。

    結論 COPMI支援において,ソーシャルワークの実践や理論が十分に検討されていない現状が明らかになった。ソーシャルワークがCOPMI支援に有効であることを踏まえ,今後は,ソーシャルワーカーの実践を実証的に分析し,理論と実践の統合を目指した研究を進めることが求められる。

  • 伊藤 薫, 萩 典子, 藤田 佳子
    2026 年13 巻2 号 p. 181-187
    発行日: 2026/03/16
    公開日: 2026/03/16
    ジャーナル フリー

    目的 介護職員の離職率は高く、その背景には職員間の人間関係や職場環境に起因するストレスがあるとされている。しかし、介護職員のストレス緩衝や職場環境の調整を目的とした国内の実践研究は限られており、特に健康生成論を基盤とした職場づくりの報告は十分ではない。本実践報告の目的は、介護施設のリーダー職員を対象に、健康生成的アプローチを適用した職場づくりの実践内容とそのプロセスを記述し、ストレス対処力であるSense of Coherence(以下SOC)の理論的枠組みとの整合性を検討することである。

    実践概要 対象は東海地方の社会福祉法人Aに所属する特別養護老人ホーム、通所介護事業所、居宅介護支援事業所のリーダー13名であり、実践期間は2017年1月から2018年1月までとした。当事者参加型研究の考え方を基盤とし、健康生成論の中核概念であるSOCの強化を目指した。実践は二段階構成とし、前半ではリーダー自身の課題解決と学びを支援する学習会を実施した。後半では、リーダーが主体となってスタッフを巻き込み、健康職場づくりアンケート、職場アセスメント、改善計画の作成および発表を行った。

    結論 介入の結果、リーダーは職場に内在する汎抵抗資源であるGeneralized Resistance Resources(以下GRRs)に気づき、スタッフと協働して課題に取り組む経験を重ねていた。特に、職場の良い点や日常的な実践が可視化されたことは、SOCの構成要素である把握可能感・処理可能感・有意味感の高まりにつながったと考えられた。本実践は、健康生成論に基づくリーダー主体の職場づくりが、介護職員のSOCの向上につながる可能性を示した。また、職場に内在するGRRsに気づくためのシステムを構築することで、介護施設における持続可能な職場環境形成を支援する一助となることが示唆された。

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