東海公衆衛生雑誌
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最新号
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  • 鈴木 貞夫, 尾島 俊之, 永田 知里, 八谷 寛, 若井 建志
    2024 年 11 巻 2 号 p. 143-144
    発行日: 2024/03/21
    公開日: 2024/03/23
    [早期公開] 公開日: 2023/11/09
    ジャーナル フリー
  • The Eating Habit and Well-Being Study
    中村 美詠子, 長幡 友実, 三浦 綾子, 上田 規江, 岡田 栄作, 柴田 陽介, 尾島 俊之
    2024 年 11 巻 2 号 p. 145-151
    発行日: 2024/03/21
    公開日: 2024/03/23
    ジャーナル フリー

    目的 フードインセキュリティは十分な量の安全で栄養価の高い食料に,物理的,社会的,経済的に適切なアクセスができない状態である。本研究は一般勤労者における経済的理由による欠食経験と社会経済的状態,栄養素等摂取量及び健康状態との関連を明らかにすることを目的とした。

    方法 2013年度に静岡県西部地域に所在する製造業従事者を対象として実施したThe Eating Habit and Well-being Studyのデータを用いて横断的に検討した。経済的理由による欠食は「あなたはこの1年間に,お金の節約のために食事を抜く(食べない)ことがありましたか?」と尋ねた。社会経済的状態,健康状態は自記式の質問票で,栄養素等摂取量は食物摂取頻度調査票で把握した。経済的理由による欠食経験と社会経済的状態,栄養素等摂取量,健康状態の関連をカイ2乗検定,一元配置分散分析,共分散分析(性,年齢調整)を用いて検討した。

    結果 分析対象2,154人のうち,過去1年間に経済的理由による欠食を経験した者の割合は,よくあった者が1.3%,時々あった者が3.0%,まれにあった者が8.7%(経験者合計13.0%)であった。経済的理由による欠食経験者は非経験者に比べ,年齢の平均値が低く,男性の割合が高く,食費や世帯収入が少なく,家や自家用車を所有する者が少なく,ビタミン,ミネラル等の摂取量が低かった。また経済的理由による欠食経験者は非経験者に比べ,抑うつ・うつ病の現病・既往歴あり,気分安定薬服用者の割合が高かった。

    結論 経済的理由による欠食は一般勤労者においても存在し,メンタルヘルス不調と関連していた。しかし,因果の方向性は不明である。

  • 小島 香, 岡田 栄作, 諸冨 伸夫, 斉藤 雅茂, 尾島 俊之
    2024 年 11 巻 2 号 p. 152-158
    発行日: 2024/03/21
    公開日: 2024/03/23
    ジャーナル フリー

    目的 高齢者の要支援・要介護認定者数の割合は、約19.2%にものぼる。要支援・要介護者は、医療・福祉サービスを利用している者が多く、要介護・要支援者本人と家族にとって、医療・福祉サービスに関する情報収集は必須である。しかし、高齢者がそれらの医療・福祉に関する情報にアクセスしようとする際の情報を得る先に関する報告は少ない。そこで、高齢者の医療・福祉に関する情報について、知っている地域の窓口サービスの知名度について調査した。

    方法 日本老年学的評価研究が2019年に日本の25都道府県64市町村において郵送法で実施した、要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者を対象にした自記式質問紙調査から、25,908人を本研究の分析対象者とした。研究デザインは横断研究とした。医療・福祉情報に関する項目として、地域の窓口サービスを用いた。さらに情報へのアクセスとして外出頻度や友人との交流に関する変数を用いた。それらを都市度別に分析を行った。

    結果 医療・福祉情報の情報収集先として、「知っている地域の窓口サービス」に関する問いで半数が知っていると回答していたのは、都市では保健所、市区町村の担当部署、郊外では、保健所、市区町村の担当部署、地域の民生委員、農村では、地域の民生委員、保健所、市区町村の担当部署、社会福祉協議会であった。知っている地域の窓口サービスの数では3か所以上の割合は、都市50.3%、郊外55.2%、農村59.8%、知っている場所が【1つもない】の回答は都市8.6%、郊外6.1%、農村5.2%であった友人と会う頻度、友人の家に行く、老人クラブ・健康体操やサロンなどの介護予防のための通いの場においては、都市や郊外と比較して農村で多かった。

    結論 知っている地域の窓口サービスについて、都市や郊外と比べて農村では福祉協議会・福祉事務所・地域包括支援センター・民生委員の知名度が高かった。これらの環境を有効に活用することで、農村地域の高齢者においても医療や福祉の情報を得られやすい環境を整えられる可能性が示唆された。

  • ―静岡県二次医療圏別の検討―
    山田 友世, 竹内 浩視, 尾島 俊之
    2024 年 11 巻 2 号 p. 159-168
    発行日: 2024/03/21
    公開日: 2024/03/23
    ジャーナル フリー

    目的 将来の医療需要は,今後の人口急減と高齢化の進行により,大きな変化が予想される。静岡県と二次医療圏における診療科別将来推計急性期入院患者数を算出し,それぞれの将来医療需要について検討する。

    方法 2019年のDPCデータを用いて,診療科・男女・年齢4階級別(0-15歳,16-64歳,65-74歳,75歳以上)受療率を算出した。それらを静岡県の将来推計人口に当てはめて,2025年から2045年までの5年毎に,全県と二次医療圏別の急性期入院医療における診療科別将来推計患者数を算出した。

    結果 全県の診療科別推計急性期入院患者数は消化器内科が最多で,続いて循環器内科,呼吸器内科の順であった。全診療科で2025年もしくは2030年に推計患者数がピークとなり,2035年以降は減少した。二次医療圏別の検討では,賀茂と熱海伊東で2025年以降,全診療科の推計患者数が減少した。駿東田方,富士,静岡,志太榛原では2025年もしくは2030年にピークとなり,その後減少した。中東遠でもほぼ同様の傾向であったが,ピークの遅い診療科を認め,呼吸器内科と総合診療科は2035年にピークとなった。西部では,診療科毎のピークが2025年,2030年,2040年に分散し,循環器内科,呼吸器内科,総合診療科の3診療科は,2045年まで増加傾向が続いた。

    結論 二次医療圏毎に診療科別将来推計患者数の推移は異なり,今後も急性期医療需要の高まりが予想される診療科を含む医療圏と,急性期から慢性期へ医療需要の変化が予想される医療圏を認めた。今回の結果は,静岡県における急性期入院医療需要の将来予測を明らかにし,今後の医療政策の策定に有用な報告と考えられた。

  • 蒔田 寛子, 鈴木 知代
    2024 年 11 巻 2 号 p. 169-178
    発行日: 2024/03/21
    公開日: 2024/03/23
    ジャーナル フリー

    目的 住民ボランティアの認知症高齢者支援の実態と課題を明らかにすることを研究目的とした。

    方法 愛知県A市で高齢者支援に取り組む住民ボランティア117名を対象に無記名自己記入式調査を実施した。5の上位項目に38の下位項目を設定し,回答を得た84名を対象に,記述統計を行った。さらに研修受講の有無と38の下位項目別にカイ2乗検定を実施し,有意確率を確認した。

    結果 研究参加者は,女性が61名(72.6%),年齢は70歳台が29名(34.5%)と最も多く,研修受講経験“有”が37名(44.0%)であった。【中核症状の理解】で“知っている”が6割を超えた下位項目は5項目,【認知症高齢者への支援】で“行っている”が6割を超えた下位項目は5項目,【認知症高齢者とのコミュニケーション】で“行っている”が6割を超えた下位項目は5項目であったが,【認知症高齢者への支援で困っていること】の下位項目では“はい”が6割を超えた項目はなかった。【認知症高齢者への支援で気づいたこと,実施していること】で“はい”が6割を超えた下位項目は2項目であった。研修受講の有無と38の下位項目別にカイ2乗検定を実施したところ,有意差がみられた下位項目は13であり,【認知症高齢者への支援】【認知症高齢者への支援で困っていること】の下位項目に有意差が集中した。

    結論 住民ボランティアは,個人の経験の中で知識や支援方法を修得していると推測されるが,一般的な認知症の症状の理解や高齢者への基本的な支援に留まり,認知症の症状の理解に基づく具体的な支援へのつながりは低く,経験を知識とすることの限界があった。認知症や介護サポートの専門家ではない住民ゆえに自身で経験を知識とする難しさがあり,学習の機会が必要である。行政や専門職の継続的な学習機会提供などの支援が,安定したボランティア活動を可能にすることが示唆された。

  • 内田 あや, 山本 ちか, 渡辺 和代, 冨田 美菜子, 小濵 絵美, 加藤 恵子
    2024 年 11 巻 2 号 p. 179-189
    発行日: 2024/03/21
    公開日: 2024/03/23
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    目的 本研究は,菓子パンを朝食に取り入れることの問題点について明らかにすることを目的とした。そのために,1.普段の朝食時に菓子パンを食べる習慣があることと,食品摂取状況および栄養素摂取量との関連を検討することとした。2.普段の朝食時に菓子パンを食べる習慣があることと,主食・主菜・副菜が揃った食事をしているかの関連を検討することとした。3.食生活に対する心掛け,栄養の大切さについての態度,栄養を考えた食事に対する自己効力感といった食事に対する態度との関連を検討することとした。

    方法 高校2・3年生370人を対象に,食に関する自記式質問紙と簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ15y)を用いた調査を集合法で実施した。回答に不備のある人等を除く女子323人を解析対象とした。

     普段の朝食摂取内容の回答を用いて菓子パン摂取有群と菓子パン摂取無群に群分けした。普段の朝食摂取内容のうち,主食,主菜,副菜の選択肢の該当数の合計(以下,主食・主菜・副菜の該当数)で対象者をカテゴリ化し,菓子パン摂取の有群と無群でクロス集計を行い,χ2検定および残差分析を行った。菓子パン摂取有群と無群の2群間の習慣的な食品群別摂取量および栄養素摂取量を比較した。平均値の比較には対応のないt検定を用いた。

    結果 菓子パン摂取有群は123人,菓子パン摂取無群は157人であった。菓子パン摂取の有無と主食・主菜・副菜の該当数との間に有意な関連がみられた。残差分析の結果,菓子パン摂取有群ほど主食・主菜・副菜の該当数が0の者が有意に多かった。菓子パン摂取無群に比べ菓子パン摂取有群において,習慣的な摂取量が有意に少なかった食品群は,豆類,その他の野菜,魚介類であった。菓子パン摂取無群に比べ菓子パン摂取有群において,習慣的な摂取量が有意に少なかった栄養素は,たんぱく質エネルギー比率,ビタミンD,ビタミンK,ビタミンB1,ビタミンB2,ナイアシン,ビタミンB6,ビタミンB12,カリウム,カルシウム,マグネシウム,リン,鉄,亜鉛,銅であった。

    結論 菓子パン摂取有群ほど,朝食時に主食,主菜,副菜を食べていない者が多かった。菓子パン摂取有群ほど,若い世代の摂取量が少なくなりがちな豆類,その他の野菜,魚介類の摂取量も少なかった。いくつかのビタミンやミネラル,たんぱく質など不足しないように摂取することが望ましい栄養素の摂取量も少なく,望ましくない栄養摂取状況であること示唆された。菓子パン摂取有群では,朝食時に主食,主菜,副菜を食べていない者が多いことが,習慣的な栄養素摂取量に影響している可能性が考えられた。

  • 杉井 たつ子
    2024 年 11 巻 2 号 p. 190-194
    発行日: 2024/03/21
    公開日: 2024/03/23
    ジャーナル フリー

    目的 「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」施行後の医療的ケア児の支援体制の整備について分析し,医療的ケア児を地域で支援するための課題について考察する。

    方法 対象は,2021年12月1日から2023年11月30日までに発行された全国紙の記事見出しおよびキーワードを「医療的ケア児」で検索した。法施行後の支援体制の整備状況や支援状況の変化に関する記事を抽出し,分析する。

    結果 法施行後は,マスメディアの掲載記事が増加し,社会的関心が高まっている。医療的ケア児支援法施行後の行政による支援体制は,財政支援など整備されている。反面,医療福祉資源や人材が豊富な都市部では多様なサービスが提供されつつあるも,支援センターの整備が進められていない地域などとの地域格差が生じている。保護者のニーズが高い介護負担の軽減については,レスパイトサービスの不足が著しく,家族の介護負担の軽減の改善に至っていない。また,学校・保育園での日中の受け入れが全国的に整備されているが,看護師等の人材の確保が課題となっている。さらに,災害時の個別避難計画の作成も自治体の課題となっている。

    結論 新聞報道記事数から,法施行後の社会的関心は高まっており,医療的ケア児支援法施行後の支援体制は整備が進んでいる。支援センターにおける支援体制の確立は今後の課題である。

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