2019 年 21 巻 p. 006-014
本稿では,地域の交通とソーシャル・キャピタルとの関係について定量的な把握を行う.まず,県別パネルデータの分析から,乗合バスの利用頻度が高い県は,信頼,互助の水準も高く,地縁の重要性に対する意識も高いという傾向があること,一方,乗用車の普及度合いは,信頼,互助について逆の関係にあるという結果が示される.また,アンケート調査から,神戸市で導入されたコミュニティバスは,住民のライフスタイルを変え,友人・知人と会う頻度や近隣の付き合い,新たな知り合いを増加させたことが示される.これらの結果は,地域公共交通が従来の費用便益分析には含まれないソーシャル・キャピタルという便益をもたらすことを示唆している.