2020 年 22 巻 p. 065-
インフラの整備効果を科学的に明らかとすることの重要性は,1997年の費用便益分析制度の導入に際しかなり精緻に議論がなされ,その結果,安全側でみて最低限かつ確実に捉えられる発生ベースの便益として,いわゆる三便益(走行時間短縮便益,走行経費減少便益,交通事故減少便益)による整備効果計測が標準化された.これに対し,インフラ整備の波及効果も制度に取り込むべきとの意見が強く出されるようになった.しかし,安易な波及効果の導入は便益の二重計測につながる恐れがあり,それは費用便益分析が導入される際に最も懸念されていたことであるため,絶対避けるべきである.本書は,この懸念に対し「科学的」な計測手法を用いることにより,二重計測等の問題を生じさせることのないインフラ整備の波及効果を計測するための方法論を,丁寧に解説した良書である.