抄録
本研究は,日本プロサッカーリーグ(J リーグ)Division I にて競技している一流サッカー選手10 名を対象に,漸増負荷走中における血中グルコース濃度(Glu)の動態を縦断的に測定し,サッカー選手のGlu 動態特性を明らかにすることを目的とした.対象者はトレッドミル上にて漸増負荷走テストを2009 年1 月,2009 年8 月および2010 年1 月の計3 回実施した.各測定日における漸増負荷走中の血中乳酸濃度,Glu および酸素摂取量を測定し,乳酸性作業閾値(LT),血中グルコース上昇閾値(GT)および最大酸素摂取量(VO2max)を分析した.その結果,LT は全ての測定における全ての対象者で認められ,測定日間におけるLT とVO2max に有意な差は認められなかった.一方で,GT の出現頻度は測定日ごとに5 名,9 名,3 名と変動し,シーズン中に実施された2 回目の測定においてGT の出現頻度が増大する傾向が認められた.本研究結果より,先行研究で報告されているGT がサッカー選手において必ずしも出現しないことが明らかとなった.また,持久性能力の指標とされるLT やVO2max に有意な変化は認められなくても,十分に専門的なトレーニングを積んだシーズン中において運動中のGlu 動態が変化し,GT の出現度数に影響をおよぼす可能性が示唆された.