トレーニング科学
Online ISSN : 2185-9191
Print ISSN : 1349-4414
ISSN-L : 1349-4414
23 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 池田 祐介, 高嶋 渉, 貴嶋 孝太, 太田 洋一, 村田 正洋
    2011 年23 巻1 号 p. 21-30
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/23
    ジャーナル フリー
    第10 回チャレンジ・ザ・オリンピックにおける1 kmタイムトライアルと250 mタイムトライアルのスタート動作を側方から撮影し(n = 60),スタート局面のパフォーマンスが異なる群間でスタート動作を比較した.1 kmタイムトライアルにおけるスタートから 10 m までの通過時間は,1 m 通過時間,195 m 通過時間との間に有意な正の相関がみられ,1 m通過時間は発走機のストッパーが開放された時点の大転子の水平速度と高い負の相関(r = - 0.897,P <0.001)がみられた.スタート動作の比較では,パフォーマンスの高い上位群のストッパー開放時の肘関節角度,肩関節角度は小さく,上肢の強い引きによってクランク中心上でペダルを踏み込む傾向がみられた.以上のことから,自転車競技のスタート動作においては,スタート前の準備局面で身体の水平速度を高めるとともに,クランク中心上でペダルを踏み込むことで踏力を高める技術が重要であることが明らかになった.
  • 福谷 充輝, 宮本 直和, 金久 博昭, 川上 泰雄, 矢内 利政
    2011 年23 巻1 号 p. 31-38
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/23
    ジャーナル フリー
    本研究では,活動後増強を生じさせるために行うコンディショニング収縮の時間が,その後の最大随意短縮性トルクの増加の程度に与える影響を検討した.男性9 名に6 秒間および14 秒間の最大随意等尺性足関節底屈トルク発揮(コンディショニング収縮)を行わせ,その前後の単収縮トルクおよび最大随意短縮性トルクを比較した.単収縮トルクは6 秒間および14 秒間条件においてPre よりも有意に増加し,Post の値は14 秒間が6 秒間条件と比べて有意に大きかった(p < 0.05).一方,最大随意短縮性トルクは6 秒間条件のみ有意に増加した(p < 0.05).また,筋電図の結果から,14 秒間条件では中枢性疲労が大きいことが示唆された.これらの結果から,最大随意短縮性トルクにおいては,コンディショニング収縮の実施時間の延長は力発揮能力を増強させるが,同時に生じた筋疲労の影響により,コンディショニング収縮による増強効果は打ち消されることが示唆された.
実践研究
  • 北 哲也, 粟国 尚子, 櫻木 規美子, 岡崎 寛, 前田 明
    2011 年23 巻1 号 p. 39-43
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/23
    ジャーナル フリー
    本研究では,直径を狭めたリングを用いてのシュートトレーニングがフリースローのパフォーマンスに及ぼす影響を明らかにした.被検者は大学バスケットボール選手12 名とし,トレーニング群(6 名)は直径を狭めたリング(35cm)でのシュートトレーニングを1 回30 球,週5 日,計4 週間行った.その結果,トレーニング後のシュート成功本数の比較で,失敗試技数において,トレーニング群がコントロール群に比べ有意に低くなった(p<0.05).また,トレーニングによって投射角度のばらつきが小さくなった(p<0.01).リングの直径を狭めてトレーニングすることで,リングのより中心に目標を定めることができ,安定したシュートが打てるようになった可能性が示唆された.
  • -一流アマチュア野球選手(647 名)および日米プロ野球一軍選手(598 名)を対象として-
    筒井 大助, 船渡 和男, 高橋 流星
    2011 年23 巻1 号 p. 45-54
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/23
    ジャーナル フリー
    本研究は,野球における競技レベルの違いで,体格がどのように打撃内容に影響を与えるのか検証した.競技成績の高い高校野球,大学野球および社会人野球,さらに日本プロ野球そしてメジャーリーグの5 群,計1245 選手の身長および体重と打率,長打率,三振率の関係,そして群ごとに打率と長打率,長打率と三振率,打率と三振率の関係を検討した.
    体重が重くなれば長打率が高くなる傾向が示され,身長よりも体重が長打率に大きく関係していることが示された.三振率はプロ選手の場合,身長が高くなれば高くなる傾向が示されたが,アマチュア選手は傾向が示されなかった.全ての群で打率が高くなると,長打率は高くなるが,三振率は低くなる傾向が示された.また,長打率が高くなると三振率が低くなる傾向はアマチュア選手のみに示された.
    これらの結果から,それぞれの競技レベルにおける打撃の特性に体格が影響を及ぼしていることが示唆された.
  • - 一流サッカー選手を対象とした縦断的分析 -
    仙石 泰雄, 石崎 聡之, 中村 和照, 西川 誠太, 戸苅 晴彦
    2011 年23 巻1 号 p. 55-62
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/23
    ジャーナル フリー
    本研究は,日本プロサッカーリーグ(J リーグ)Division I にて競技している一流サッカー選手10 名を対象に,漸増負荷走中における血中グルコース濃度(Glu)の動態を縦断的に測定し,サッカー選手のGlu 動態特性を明らかにすることを目的とした.対象者はトレッドミル上にて漸増負荷走テストを2009 年1 月,2009 年8 月および2010 年1 月の計3 回実施した.各測定日における漸増負荷走中の血中乳酸濃度,Glu および酸素摂取量を測定し,乳酸性作業閾値(LT),血中グルコース上昇閾値(GT)および最大酸素摂取量(VO2max)を分析した.その結果,LT は全ての測定における全ての対象者で認められ,測定日間におけるLT とVO2max に有意な差は認められなかった.一方で,GT の出現頻度は測定日ごとに5 名,9 名,3 名と変動し,シーズン中に実施された2 回目の測定においてGT の出現頻度が増大する傾向が認められた.本研究結果より,先行研究で報告されているGT がサッカー選手において必ずしも出現しないことが明らかとなった.また,持久性能力の指標とされるLT やVO2max に有意な変化は認められなくても,十分に専門的なトレーニングを積んだシーズン中において運動中のGlu 動態が変化し,GT の出現度数に影響をおよぼす可能性が示唆された.
  • 平山 祐, 山本 正嘉
    2011 年23 巻1 号 p. 63-75
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/23
    ジャーナル フリー
    全日本選手権または大学生選手権で入賞経験を持つカナディアンカヌー選手を対象として,通常の水上練習や筋力トレーニングと並行して,カナディアンカヌー用のエルゴメーターを用いて高強度のインターバルトレーニングを行わせた.その際,このトレーニングを通常酸素環境下で行う群(N 群,n=9)と,常圧低酸素室を用いて低酸素環境下(高度2000 ~ 3000m 相当)で行う群(H 群,n=9)の2 群を設けた.両群とも,トレーニングは週に3 ~ 4 回の頻度で3週間行った.その結果,N 群もH 群も,カヌーエルゴメーターを用いて測定した有酸素性能力(最大酸素摂取量)と無酸素性能力(10 秒間の全力漕時のパワー)がいずれも改善し,さらに200m 漕と500m 漕のタイムも改善した.ただし,200m 漕タイムの改善については,H 群の方がN 群よりも有意に大きかった.したがって,カヌーエルゴメーターを用いた補強トレーニングは,通常酸素環境で行ってもさまざまな作業能力の改善につながるが,低酸素環境で行えばそれに加えて,無酸素性および有酸素性の両能力がいずれも関与する200m 漕の成績をさらに大きく改善できる可能性が考えられた.
資料
  • 陳 周業, 石井 良昌, 渡部 和彦, 上田 毅, 黒川 隆志
    2011 年23 巻1 号 p. 77-85
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/23
    ジャーナル フリー
    本研究は小学1 年生から6 年生の男子児童128 名と成人男子10 名を対象として立ち幅跳び動作を撮影し,2 次元解析を行い,上肢と下肢のタイミングの取り方に関して検討した.その結果,肩関節の伸展平均角速度,屈曲平均角速度,膝関節の伸展平均角速度は年齢が上がるにつれて増加した.肩関節屈曲時間は1 ~ 4 年生では減少(1 年生vs 4 年生:p<0.01),股関節伸展時間は4 年生~成人では増加した(4 年生vs 成人: p<0.05).肩関節屈曲時から股関節伸展時までの時間(SHT)は年齢が上がるにつれて減少し,6 年生の半数と多くの成人において肩関節屈曲時と股関節伸展時はほぼ同時に観察された.SHT は跳躍距離との関連性が最も高く(r = - 0.577, p<0.001),児童の立ち幅跳びの跳躍距離に重要であると考えられた.児童の跳躍能力を向上させるためには,それぞれの学年の上肢と下肢のタイミングの取り方の特徴を把握し指導することが大切である.
feedback
Top