トレーニング科学
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実践研究
低酸素および高酸素環境下におけるカヤックパドリング時のパフォーマンスと生理応答
一箭 フェルナンド ヒロシ中村 夏実山本 正嘉
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2011 年 23 巻 2 号 p. 167-176

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抄録
本研究では,通常酸素条件(酸素濃度20.9 %),低酸素条件(同16.4 %)および高酸素条件(同30.0 %)において,カヤックパドリング運動を行った際のパフォーマンスおよび生理応答に与える影響について検討することを目的とした.8 名のスプリントカヤック選手を対象に,カヤックエルゴメータを用いて多段階運動負荷試験を実施した.その結果,通常酸素条件と比較して低酸素条件では,最大運動時の運動強度(- 6 %)および酸素摂取量(- 5 %)が有意(P < 0.05)に低い値を示した.また,最大下運動時の同一運動強度における換気量および血中乳酸濃度は一部で高い値を示した.一方,通常酸素条件と比較して高酸素条件では,最大運動時の運動強度(+8 %)および酸素摂取量(+9 %)が有意(P < 0.05)に高い値を示した.また,最大下運動時の同一運動強度における血中乳酸濃度は一部で有意に低い値を示した.これらのことは,低酸素および高酸素条件でパドリング運動を行うと,通常酸素条件ではかけることのできない,生理的あるいは物理的な負荷をかけられることを意味している.したがって,通常酸素環境に加えて,低酸素および高酸素環境でトレーニングを行うことは,通常酸素環境のみでトレーニングを行う場合と比べて,より多様なトレーニング負荷を設定できる可能性があると考えられる.
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© 2011 日本トレーニング科学会
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