1967 年 20 巻 4 号 p. T103-T109
目的 紡績用リングのなじみ現象について追求するため, まずレーヨンスフ紡出におけるなじみの形態を観測した. 結果 (1) リングの接触電気抵抗値は, 紡出初期に急激に上昇し, 以後漸増を続け, 一定時間 (本実験では, ほぼ1000hr紡出後) に達して定常状態に入る. (2) リング表面の電子顕微鏡による観察では, トラベラの滑走方向に塑性変形を生じ, そのとき発生する高温による融着現象が認められ, 紡出時間の経過に伴うなじみの過程を観察できた. (3) リングの表面層の断面を観察の結果, なじみに伴って表層部に変化を生じ, 電子回折の結果γ-Fe2O3と多量の炭素を確認した. これらの観察結果より, なじみ期間, なじみの本質, 定常状態などについて考察を加えた.