繊維機械学会誌
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服装の新奇さの度合いと単純接触の効果
長田 美穂小林 茂雄
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1995 年 48 巻 4 号 p. T87-T94

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抄録

目的 筆者らは, 先の研究において, 対象を見慣れることによってその対象に好感を抱くようになるという単純接触の効果が, 服装においても生じることを見い出したが, 今回は服装の持つ新奇さの度合いと単純接触の効果とがどのようにかかわるかを究明する.すなわち, 新奇さの度合いが, 極めて高い, 高い, 中程度, 低い, 極めて低いの5段階のそれぞれの服装の着用写真を用いて, その写真を繰り返し目にすることによって, その服装に対する好感度が増大するとすれば, いずれにおいてより増大するかを明らかにする.成果 新奇さが極めて高い場合においてのみ, 10回呈示条件よりも20回呈示条件の好感度の方が有意に高くなっており, 単純接触の効果が認められた.ただし, 1回呈示条件よりも10回呈示条件の方が好感度の平均が低く, 単純接触の効果とは逆の形になっていた.これは, 先の研究と異なり今回の研究では各呈示条件の被験者は別々であり, 従って10回呈示条件や20回呈示条件の被験者にとって, 繰り返し目にする写真は1種類だけであり, 1種類の服装写真への意識の集中が起こったために途中で好感度が低下した可能性がある.そして, 繰り返しの呈示が10回を越えて20回になるにつれて, 単純接触の効果が現われてきたのではないかと考えられる.本研究は, 刺激対象への意識の集中が単純接触の効果を弱める可能性をも示したといえよう.なお, 繰り返しの接触の飽きによるような効果が, 新奇さが中程度の場合においてのみ現われた.

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© 一般社団法人日本繊維機械学会
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