抄録
本稿の目的は、スピリチュアルケアのあり方について 考察することである。そのために、緩和ケア及びエン ドオブライフ・ケアの領域で、一つの方法論としてア メリカで認知されている「ミュージック・サナトロ ジー」(ベッドサイドでハープと歌声を使い、末期の患 者とその家族の、身体的、感情的、スピリチュアルな ニーズに、プリスクリプティヴ・ミュージックで応じ る実践)に注目する。まず、ミュージック・サナトロ ジーの特質を検討し、その後、著者が日本で応用実践 した「ハープ訪問」を分析して、音・音楽のスピリチュ アルな機能と意味を明らかにした。そしてこれをふま え、スピリチュアルケアの様相を考察し、5側面を提示 した。それらは、「魂の満たし」が起こってくるという 構え、共にあるスペースの提供、「黙想的な」態度の涵養、 コミュニティでのかかわり、ケアの本来性-内面的にも世界全体的にも人間の調和状態を目指すこと-への 立ち返り、である。