抄録
リン及びカルシウム欠乏下にある木本に及ぼすアルミニウムの影響を調べるために,それぞれpH 5.8に調整した(A),(B),(C)3種の水耕培養液で9週間,2年生クヌギ実生苗を育成した:(A)完全栄養の1/5濃度Hoagland培地,(B)リン除去した1/5濃度Hoagland培地,(C)カルシウム除去した1/5濃度Hoagland培地.その後,この各培地に0,0.27,2.7 mMのアルミニウムを添加し,pH 4.0で6週間育成した.収穫した苗は各器官の乾物重量を測定し,アルミニウム,カルシウム及びリン濃度を測定した.9週間の前処理中に,カルシウムを含まない培養液で育成した苗は,根の生育が抑制された.しかし,その後2.7 mMのアルミニウムを添加すると新しい発根が見られた.2.7 mMのアルミニウムを含みリンを含まない培養液で育成した苗では地上部,根ともに成長が抑制された.2.7 mMアルミニウムを含む培養液で育成した苗の根,幹及び葉からは,高濃度のアルミニウムが検出された.本実験結果より,アルミニウム処理は特徴的な発根促進を引き起こすが,この現象は,樹体中にカルシウムが欠乏していても生じ,リンが欠乏していると生じなかった.