樹木医学研究
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論文
葉緑素計を用いて判定したケヤキの活力度と葉の光合成・蒸散速度の関係
田中(小田) あゆみ臼杵 裕之福田 健二
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2009 年 13 巻 1 号 p. 12-16

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抄録
樹木のストレス状態の指標とされる葉緑素計の値(SPAD値)と葉の生理特性の関係を調べるため,植栽環境の異なるケヤキの活力度をSPAD値により健全,軽度生育不良,重度生育不良の3段階に分類し,分類グループごとに葉の水ポテンシャル,光合成・蒸散速度の日変化及びクロロフィル蛍光を測定した.土壌面に植栽された個体の多くはSPAD値が大きく,健全と判断されたが,コンクリート面植栽個体はSPAD値が小さい傾向があり,軽度または重度生育不良と判断された.葉の生理機能の測定から,軽度生育不良に分類された個体は健全個体に比べ水ストレスは受けていないものの,日中の光合成速度が低く,光合成能力が低下していると考えられた.重度生育不良に分類された個体は健全個体に比べて夜明け前水ポテンシャル及び光合成・蒸散速度が低く,日中のFv/Fm値の低下が大きかったことから,水ストレスと光阻害を同時に受けていると考えられた.以上から,SPAD値を基準に判断した活力度と,葉の生理的機能に密接な関係かあることが明らかになり,今後,活力度診断の有用な指標の一つになると考えられた.
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© 2009 樹木医学会
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