2019 年 23 巻 1 号 p. 1-6
本研究では,マツ盆栽輸出の障害となっているゴマダラカミキリの持ち出しリスクを解決すべく,クロマツおよびゴヨウマツがゴマダラカミキリの餌植物となりうる可能性について検討した.本種メス成虫に,摂食開始時からクロマツ・ゴヨウマツ枝のみを与えた場合,全ての個体は与えられた枝を摂食した.しかしながら,2週間後の生存率はそれぞれクロマツ37%,ゴヨウマツ40%であり,ミカン枝を与えた区(100%)と比べて低い結果となった.また,ミカン枝とクロマツ枝もしくはゴヨウマツ枝を同時に提示した際にも,全てのメス個体がミカン枝を多く摂食した.ミカン,クロマツ,ゴヨウマツ枝を与えて1,2週間後のメス個体を解剖し,卵巣の発育を確認した.ミカンを与えたメス個体は未成熟卵・成熟卵が卵巣内に確認できたが,クロマツ・ゴヨウマツを与えたメス個体からはひとつの卵も見つけられなかった.クロマツ・ゴヨウマツを食べた個体は,生存日数も短く,また性的成熟もしない,あるいはできないことが明らかとなり,両マツはゴマダラカミキリの餌としては不適であることが示された.