2024 年 28 巻 1 号 p. 3-9
2022年10月から11月,奄美大島において,カイガラムシによるソテツの集団的な葉の黄化被害が発生した.このカイガラムシは,著者らによりAulacaspis yasumatsuiと同定され,国内初確認の事例として報じられた.本種は世界的にCycad Aulacaspis Scale略してCASとの名称で呼ばれるソテツ類の重要害虫である.本報では,この事例における同定および奄美群島での本種の生息や被害状況に関する調査について,その方法と結果を報告する.観察の結果,形態的特徴から本種と同定され,ミトコンドリアDNAのCOIおよびCOII領域の塩基配列からも本種であると確認されるとともに,既報の中国福建省産と本研究の奄美大島産の本種のCOIバーコード領域の塩基配列630 bpが100%一致した.また,被害は奄美市,龍郷町,大和村および宇検村で確認され,本種が生息しているソテツでは,葉の黄化が生じ,全ての葉が黄化したものもあった.また,全葉が黄化するような激しい被害や集団的な被害は奄美市名瀬港付近に集中していた.