Tropics
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琉球列島の第四紀シカ類化石Cervus (Metacervulus) astylodonにみられるモルフォタイプと媛小化プロセス
松本 幸英大塚 裕之
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2000 年 10 巻 1 号 p. 155-164

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抄録
琉球列島の4 つの島,徳之島,沖縄島,久米島,石垣島には,これまで更新世後期(約1.5~3万年前)の洞窟や裂罅堆積物から数多くの化石シカ(リュウキュウジカ)Cervus astylodon (Matsumoto, 1926)が産出してきた。これらの4 島から採集したCervus astylodon の中手骨を検討したところ,それぞれの島に特有のモルフォタイフ(morphotype) が確認された。
また,更に,島の違いによる4 つのモルフォタイプばかりでなく, 1 つの島(久米島)の標本群にも複数のモルフォタイプが確認された。久米島産の標本群には,久米島特有の中手骨の形態を持ちながら,体のサイズと歯や四肢骨のプロポーションがそれぞれ異なった4 つのモルフォタイプが認められた。これら4つのモルフォタイプは矮小化のプロセスの4つの段階を示している。その媛小化過程において,四肢特に肘と膝より先の部分は上腕骨,大腿骨,下顎の歯列長に比べて著しく媛小化している。この過程はまた, Cervusastylodon の矮小化が比較的短い期間に継続的な変化によって生じていることを示している。
以上のように,島嶼においては,本土とは異なり,高い頻度でモルフォタイフが発生していること,さらにシカ類においてはこの形態変異は四肢骨とくに中手骨や中足骨において顕著であることが明らかとなった。
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© 2000 日本熱帯生態学会
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