抄録
インドネシアの熱帯雨林にとって火災は大きな脅威である。しかし,土壌への野火の影響を定量化した情報はきわめて限られている。そこで,インドネシアに分布するアルティソル土壌の性質に,森林火災がもたらす残 効 について検討した。木研究では,異なる野火履歴をもつ種 みの生態系下にある土壌の物理化学性を評価した。7つの調査地点は,火災履歴のない地点: 保全林(TP),松林(PF),アカシア植林地(AM) , ホームガーデン(HG)と,被火災地点: 1995,1997,1998年に火災の被害を受けたアカシア植林地(それぞれ,AM-b95,AM-b97, AMb-98),に大別される。CF, PF, AMでは表層の有機物層が認められたが,その他の地点には存在しなかった・土壌形態学的特徴としては,火災履歴のない地点の土壌は,より暗色Aの層を残していた。仮比重は地点間で大きな違いはないものの,火災後の時間経過に伴い減少する傾向にあった。土壌硬度は被火災地点の表層で若干大きくなるものの,植物生育の制限要因となるほどではなかった。火災履歴のない地点では被火災地点より,酸性が強く有機物の蓄積量も多かった。交換性Ca量はPF, AM-b98, HGで他の地点より高かった。いずれの地点も粘土含量が極めて高いにも関わらず,陽イオン交換容量(CEC)が 低かった。有効態リン酸含量は低く,交換性アルミニウムの含量と有意な負の相関が認められた。Al,Si,Fe酸化物(水酸化物)含量ほ非晶質のものより結晶質のものが多く,荷電ゼ口点の値は4 前後と低かった。火災履歴のない地点はある地点より化学的肥沃度がやや高いものの,調査地のアルティソル土壌は強風化を受けており,自然肥沃度そのものが低いことが明らかであった。