抄録
インドネシアのスンダ海峡にあるクラカタウ諸島の一つのアナククラカタウ島で,砂浜に漂着した果実と種子を調べた。調査は, 1990-1991 年に東風のモンスーンと西風のモンスーンの季節の2 回行った。アナククラカタウは1930年から何回も続いている噴火によって海上に現われた島である。砂浜の裸地部分で海岸線に直交するラインにそって1m ごとに1 m2 の方形区を配置したトランセクトを62本設定し,その中に出現した漂着種子と種子および、実生を調べた。
2つの季節の総計で38科66種の漂着果実・種子を発見した。そのうち30 種はクラカタウ諸島に成熟個体が見られて,それが呆実や種子を供給している可能性があった。さらに8 種はクラカタウ諸島に幼個体が記録されている種類であった。内陸性の果実や種子も発見されたが,それらの実生はまれであった。トランセクトは溶岩流が海に接している西部以外の砂浜に設定したが,東部の砂州で最も多くの漂着果実と種子が発見された。この海岸は両季節とも海流の流れにおよそ直交する位置に突出していることが,漂着の多い原因と考えられる。また果実・種子が多数漂着していることは,東部の砂州がアナククラカタウ島の中ではもっともよいことの一因を担っている可能性がある。