チンパンジーの生態と社会組織に関する多くの理論的課題に取り組む際に,食物の量の評価は決定的な重要性をもつ。しかし,生息地全体の食物の量を評価するために様々な方法が用いられており,調査地ごとに方法が異なるので,各調査地で得られた結果を基準化することなしに意味のある比較をすることはできない。
ここでは,まず,ウガンダのキパレ森林で同時に3つの方法で果実の量を測定した結果を比較した。果実トラップ法による果実量推定は,フルーツ観察路に沿ってあるキーとなる果樹種の結実状態の観察による評価,および,システマテックなトランセクト・サンプリング法の結果のいずれとも相関しなかった。しかし,後二者の間には相関が見られた。
つぎに, 3つの調査地で,互いに類似しているが同じではない方法をそれぞれ用いて草本性食物の量を測った結果を比較した。この分析の結果は,異なる方法で得られた結果を比較することの困難さを例証することとなった。これらを考慮して,今後,調査地間の比較可能性を高めていくための方法を提示した。