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中央アフリカ共和国のザンガーサンガ保護区に生息するローランドゴリラの営巣行動:その個体数推定と集団動態に対する意味
Melissa J. REMIS
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1993 年 2 巻 4 号 p. 245-255

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抄録

中央アフリカ共和国,ザンガーサンガ密林保護区のパイーホクに生息するローランドゴリラの27ヶ月にわたる調査(1990.8-1992.11) で, 1231箇の巣が163箇所の泊場で発見された。これらの分析で得られた結果を,同地域の異なる時期の調査結果および他の地域の結果と比較して報告する。
巣数の資料は, 1) 地域個体群の個体数や生息密度の推定と, 2) ゴリラ集団のサイズや構成,そしてそれらの変動を知るために直接観察の補助としてよくもちいられる。パイーホク調査地では,継続調査中に記録された巣(寝跡だけのものも含める)のうち,44% が巣としてなにもつくっていない寝跡だけのものであった。15% の泊場所においては,巣は全く作られていなかった。同じ地域できめの細かい巣跡のセンサスを行った結果では,巣無しの寝跡が30% を占めた。これらの結果は,巣無しの寝跡を0~10% の範囲と報告している他地域での調査結果と著しく異なる。
泊場でどのような巣を作るかは,多分,適切な材料が泊場にあるかどうかに左右されよう。パイーホクでは,局地的植生,季節,巣を作る個体の数が,作られる巣のタイプに影響していることが示された。これらの要因は,また,営巣行動の地域間の変異の要因となっている可能性がある。ちゃんとした巣は50 日間以上もそれと確認できるが,糞とのセットで確認される巣無しの寝跡は,通常, 4 日間経過するとわからなくなる。したがって, 4 日間を過ぎた泊場の寝跡のカウントは一般に過少評価になり,場合によっては泊場さえ記録できないこともありうる。これらのことから,巣数調査の正確さは,地域,サンプルした場所の植生,そして季節によって変動すると考えられる。

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© 1993 日本熱帯生態学会
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