東北数学教育学会誌
Online ISSN : 2435-8886
Print ISSN : 2435-0613
変数概念の拡張に伴う困難性の一考察
関数間の関係を新たな関数と見ること
今野 省吾市川 啓
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 53 巻 p. 41-52

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抄録

本研究は,生徒が関数の学習における変数の概念をどのように理解し,どのような点に困難を感じているのか,生徒の学習の様相から探り,その一端を明らかにすることで変数の困難性に対する改善の手がかりを得ようとするものである。そのためにまず,高等学校数学科の三角関数の学習場面における,生徒の学習に着目した。高等学校数学科では変数の関係を推移させ,新たな関係を見る中で考察を進めることが少なくない。しかし,そうした経験を何度もしてきているはずの生徒であっても,適切に関係を推移させて考察を進めていくことは容易ではないことがうかがえた。このことを踏まえ,第1 学年「二次関数」の学習場面において,変数の推移に着目した授業を構想・実践し,その際の生徒の反応を分析した。このことから変数概念の拡張における困難性の一端とその改善の1つとして(1) 式の見方がわからず式変形を認めることができないことが,関数における変数の学習の困難性の1つとして考えられること。 (2) 関数を把握する際に,グラフの動きを式の見方と関連付け,変数をまとまりと見る活動を行っていくことで関係を推移させて考察する見方を働かせる手がかりとなる可能性があること。の2 点が明らかとなった。

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© 2022 本論文著者
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