2024 年 55 巻 p. 16-24
本稿では,特に,数学的な態度のうち,関数の考えの本質である,「一つのものをほかのものと関係づけてみようとする」ことに光をあてて,生徒における数学的な態度を涵養するための教材の要件を明らかにし,その要件を満たす教材を開発することを目的とする。本稿では,「一つのものをほかのものと関係づけてみようとする」ことを涵養する教材の要件として,次の3 つ導出した。第一の要件は,生徒自ら事象から数量や位置,関係,命題を取り出し,それらを対応させたり変化させたりする経験を積むことができることである。第二の要件は,生徒自ら事象から取り出した数量や位置,関係,命題などを対応させたり変化させたりすることにより帰納的,類比的に推論し関係をみいだす経験や,みいだした関係がいつでも成り立つかどうかについて演繹的に推論する経験,発展的・統合的に考察する経験を積むことができることである。第三の要件は,生徒が一つのものをほかのものと関係づけて問題を発見・解決し,その結果として,生徒自ら一つのものをほかのものと関係づけることのよさが分かることが期待されることである。そして,この3 つの要件を満たす中学校第2 学年の生徒を対象にした図形教材を開発した。