2008 年 37 巻 p. 117-124
1974年に刊行されたアンリ・ルフェーヴルの主著『空間の生産』は,英訳されたのを機に,1990年代以降,都市論や地理学の分野でひろく再評価がすすんでいる.しかし,この書の第Ⅲ部には「空間の建築術(Architectonique spatiale)」⑴と題される章が設けられているにもかかわらず,また,この「建築」が彼の空間論において要諦をなしているにもかかわらず,『空間の生産』における「建築」の意義について積極的な言及はほとんどみられない⑵.本稿は,ルフェーヴルにおける空間論と建築との理論的関連に焦点を当て,この書の建築理論としての可能性を提起することを目的とする.