本論の目的は,強制避難ののち人口が3分の2を超えるまでに回復した川内村において,なにゆえに集落の存続が危ぶまれているのかを,集落共同の通時的分析から明らかにすることである.
分析の結果,被災地域における集落共同が,震災によって著しく弱められた事実が明らかになった.具体的には,震災後,葬送にかかわる組織は残らず解散し,神社の祭祀組織は大多数が休止に追い込まれた.このように集落共同が縮小する現状があるからこそ,集落の危機が実感されていたのである.
集落共同は互助を原理とするが,震災後は,役割を果たすことが困難な家々が目立ち始めた.家々が集落内の責任を果たすことが困難であるため,たとえ集落の持続可能性を弱めるとしても,解散や休止を選び取らざるを得ないのである.すなわち,集落共同の変質は被害であり,いくら人びとの判断であっても,自己責任に帰することはできないものである.
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