社会学年報
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特集「西田春彦の計量社会学」
  • 海野 道郎
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 50 巻 p. 1-6
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2023/02/24
    ジャーナル フリー
  • 見えない世界への探求
    片瀬 一男
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 50 巻 p. 7-19
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2023/02/24
    ジャーナル フリー

     本小論では,西田春彦の計量・数理社会学の誕生と発展を学生時代から晩年に至るまで素描した.西田は学生時代に尾高邦雄の労働者調査に参加する中で,回答と態度の間にズレがあることに気付き,態度を一次元的に捉えるリッカート尺度に疑問をもった.この疑問への解答は,和歌山大学時代に交流のあった地域研究者・井森陸平の村落尺度の検討や,同僚の統計学者・池田一貞とのラザーズフェルドの読書会で学んだ潜在構造分析によって得られた.その後の西田はこの潜在構造分析や主成分分析法を主要な分析技法にして農業集落カードの計量的分析にいどみ,とくに全国規準と地域規準の違いを通じて,地域の農業集落の特性を明らかにしようとした.さらにファジィ集合論を社会学に応用する方策も模索していた.こうした西田の方法論を支えていたのは,潜在空間を数学的に構築して顕在的な回答や曖昧な現象の背後にあって「見えないものを見る」という強い志向性であったと考えられる.

  • 西田春彦の貢献
    木村 邦博
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 50 巻 p. 21-33
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2023/02/24
    ジャーナル フリー

     日本の計量社会学の先駆者であった西田春彦が,潜在構造分析の発展に対してどのような貢献をしたのかを論じる.顕在的なものから潜在的なものを探るという西田の関心は,学生時代に抱いた疑問に遡ることができる.それは,質問紙調査に対する労働者の回答を潜在的な態度がそのまま現れたものと考えてよいかという疑問であった.西田はその後,和歌山大学在職中に潜在構造分析と出会い,同僚とともに共同研究を始めた.研究者としての西田の本領は,潜在構造分析の社会学的応用を拡張したことにあった.態度調査データに潜在クラスモデルを適用しながら,この手法を用いる際に考慮しなければならない社会調査方法論上の問題についても考察した.さらに,農業集落のような個人を超えた社会的実在のデータにも潜在クラスモデルや潜在プロフィールモデルを実際に適用してみせた.西田はまた,当時の研究動向を踏まえ,文化比較への展開も考えていたことがうかがえる.西田の研究姿勢から学ぶべきことは,問い・疑問から出発すること,顕在的な姿の背後にある潜在的なものの把握を試みること,手法の理解にあたり実データ分析を重視すること,先行研究とは異なる対象への応用を試みること,である.以上のことを重視しながら潜在構造分析を用いた社会学的研究を発展させるのが,われわれにとっての課題である.

  • 鈴木 努
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 50 巻 p. 35-44
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2023/02/24
    ジャーナル フリー

     西田春彦が1950年代にソシオメトリー的方法を用いて行った3つの研究を取り上げ,社会ネットワーク分析の視点からその先進性と意義について検討した.西田は共同研究者らとともに村落,都市公営住宅,学級といった集団を対象にソシオメトリー調査を行い,そこでの関係の親密さを規定する要因として血縁,地縁,階層,部落差別の効果を検証した.西田のソシオメトリー使用の特徴は,分析方法というより測定方法として用いた点,測定値を尺度化したうえで統計的検定を行った点である.近年研究の進んでいる統計的ネットワーク分析とは分析単位,構造的要因の統制などで違いはあるが,関係性データの尺度化における西田の厳格な姿勢は社会ネットワーク分析にとっても学ぶべき点である.

自由投稿論文
  • 岩手県盛岡市X地区における「つながりづくりをしない」高齢者支援を事例に
    大井 慈郎
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 50 巻 p. 45-55
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2023/02/24
    ジャーナル フリー

     本稿は,岩手県盛岡市X地区で行われている活動Aを事例に,地域づくりによる介護予防事業として実施されている高齢者サロンの問題点を指摘し,それを克服するための取り組みの分析を行う.近年の高齢者の社会的孤立という問題は,介護予防事業の一部として対策されている.生活機能が低下し閉じこもりになりやすい高齢者を対象として,住民運営の通いの場の充実を図る「地域づくりによる介護予防」として全国に多数の高齢者サロンが設立されている.従来の研究では,地域組織化活動や住民運動からの延長線上に位置づけられる「地域助け合い型」の活動に注目が集まっていたが,その手法では地域の中で社会関係が既に形成されている住民以外への効果が疑問視されている.本稿では,従来の活動ではすくい取ることが難しい高齢者に焦点をあて,立ち寄れる場所づくりを目的とした事例に対して,参与観察と個別インタビューを行い,取り組みの可能性と課題を検討した.そこから「新たなつながりづくり」を積極的に行わないことが,高度な相互行為儀礼の機会が発生する場面を最小限にして新規参加の難易度を低下させるという,高齢者の閉じこもり防止と住民同士のつながりづくりの間にある隙間への視点を提示する.

  • 世代間連鎖の観点から
    眞田 英毅
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 50 巻 p. 57-68
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2023/02/24
    ジャーナル フリー

     本研究は,子どもへの体罰容認意識が世代間で受け継がれているかを検証するものである.これまでの虐待に関する研究では,虐待や暴力経験をもつ親の特性や,その虐待の内容といった研究は蓄積されているものの,そういった親が子どもへしつけとしての体罰を容認するのか,という世代間連鎖に関する実証的な研究は少ない.そこで本研究は,JGSS-2008を用いて親からの暴力経験は大人になったとき,子どもへの体罰容認意識にどのように影響を与えるのかについて,誰から暴力を受けたのか,ということと性別による暴力経験の受けやすさに焦点をあて分析を行った.結果,子どもの頃の暴力経験は,男性では経験の累積が体罰容認意識に影響を与えていたが,女性では一度でも経験がある場合は体罰容認意識に影響を与えていた.また,親からの暴力経験は男性でのみ体罰容認意識に効果がみられた.以上より,子どもの頃の親からの暴力経験は体罰容認意識へつながる可能性がある一方で,性別により子どもの頃の暴力経験が体罰容認意識へ与えるメカニズムが異なることも示唆された.

  • 既存子ども数別の検証を通じて
    田中 茜
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 50 巻 p. 69-80
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2023/02/24
    ジャーナル フリー

     1990年代後半以降,女性の労働市場への参入が進んでいる一方で,男性の家事育児分担は低水準のままである.このように伝統的な性別役割が残存し夫婦間での分担が十分に行われていない状況下では,個人の働き方は本人だけでなく配偶者の働き方や家事分担などの影響を受けると想定される.本研究では男女間の不平等状態のメカニズムを解明するために,出産前後における夫婦それぞれの就業行動の変化とそれに対する配偶者の影響を検討する.とくに夫婦間の相互影響が既存の子ども数によって違いが見られるか否かを確認するために,第1子出産群と第2子以上出産群の2群に分けて検討を行った. 
    「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査」(JLPS)のパネルデータを使用し,夫婦の出産前後の労働時間が相互に影響し合うことを想定した分析を行った.結果は第2子以上出産群においてのみ,出産1年前の夫の労働時間が出産1年後の妻の労働時間に対して負の影響を持つことが示された.その一方で,出産1年後の夫の労働時間に対する妻の影響は確認されなかった.この結果は夫婦間の役割分担がジェンダー伝統主義であることを表しており,男性の働き方改革が必要であることを示唆している.

  • 逐次ロジット要因分解による教育格差変動分析
    濱本 真一
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 50 巻 p. 81-93
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2023/02/24
    ジャーナル フリー

     本論では,教育達成過程の不平等に着目し,最終学歴などでとらえる教育達成の「分布」の不平等と,学校段階移行でとらえられる教育機会の「配分」の不平等を関連付けた分析を試みる.各学校段階移行の成否に対する階層差で得られる配分格差と,配分格差の重みづけ和で示される学歴分布の階層間格差を明確に分離したRobert D. Mareのアプローチ以降,逐次ロジットモデルによる教育機会格差の把握が主流になった.その後Maarten Buisが配分格差の蓄積として分布格差との関連をとらえる手法を提案した.本論ではBuisの枠組みを用いて,親の教育的背景による子供世代の学歴分布の格差が,学校段階移行のどの時点に強く影響を受けているのかを検討する.分析の結果,親の学歴の影響力は,戦後世代で一貫して,高等教育段階,特に4年制大学に進学するか否かの確率に強く影響していた.教育達成の分布格差に対する親学歴の影響はほぼ変化していない一方で,大学進学段階の移行に対する効果は増加傾向にあり,4年制大学に進学するか否かの格差がますます学歴分布格差の中で大きな位置を占めるようになる.ここから,教育格差の発生が18歳時に集約される構造が見て取れる.

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