社会学年報
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特集「ガヴァナンス論の射程」
グローバル・ガヴァナンスとヨーロッパ・ガヴァナンス
―政治学から―
坪郷 實
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2008 年 37 巻 p. 5-16

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抄録

 本稿では,参加ガヴァナンスの視点から,「国民国家を超えるガヴァナンス」について議論をした.参加ガヴァナンスは,「多様な主体による問題解決のための機会を創出する」ものであり,「参加と討議による合意形成」を重視する新たな民主主義の展開である.グローバル・ガヴァナンスは,国際レジームをはじめとする政府間による政策調整システムと,ガヴァナンスの法化と社会化を基礎とする国家横断的な制度やネットワークによる政策調整システムからなる複合的政策調整システムであり,非階層的政策調整を基本とする.他方,「ヨーロッパ・ガヴァナンス」は,超国家機関による階層的政策調整システムと政府間・国家横断的ネットワークによる非階層的政策調整システムの組み合わせによる重層的ガヴァナンスである.EUにおける政策調整は,ヨーロッパ域外を含む国際組織における調整とリンクしており,「拡大された重層的システム」である.さらに,ベァツェルが述べているように,EUに「独特な」超国家機関による「階層的制御の影」が,ヨーロッパ・ガヴァナンスの特徴でもある.重層的ガヴァナンスにおいては,とりわけ民主主義の正統性問題がある.この問題は,「ガヴァナンスがよい政治結果を導いたか」,「政策づくりのプロセスへの多様なアクターの参加拡大」ともかかわるが,実践的には困難が伴う課題である.さらに,重層的ガヴァナンスにおいては,多様なアクター間のコミュニケーションと相互学習プロセスが重視されている.ヨーロッパ・ガヴァナンスは,グローバル・ガヴァナンスの一構成要素であり,その形成プロセスの可能性を示唆するものである.

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© 2008 東北社会学会
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