2013 年 42 巻 p. 61-71
2011年の東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故により,多くの住民が避難を余儀なくされた.新潟県でも,なお5,000人を超える人びとが避難生活を続けている.本稿では,福島県からの広域避難者とそれを迎え入れた新潟県内の団体・個人を対象としておこなってきた聞き取り調査をもとに,広域避難者の現状,避難者支援にみられる特徴,支援の課題について検討を試みた.その結果,①強制避難者(柏崎市)・自主避難者(新潟市)という「棲み分け」がみられ,避難者の属性の違いに対応した支援がなされていること,②支援に取り組む姿勢には一定の共通性(避難者との距離感)があり,その背後には災害経験の蓄積があったこと,③時間の経過とともに避難者が抱える困難は増しており,社会関係の分断が進む中で各個人・世帯が個別的な判断を迫られていること,などが分かった.その上で,ゆるやかなコミュニティの維持と避難者の共同性の回復に向けた支援が課題であることを指摘した.