2015 年 44 巻 p. 71-81
近年,日本における大学・短大中退者は増加し,中退への関心は高まっている.一方で,中退者の社会経済的地位達成に着目した研究はあまりなされていない.本稿の目的は,大学・短大を中退したことがその後のライフコースへ与える影響について,計量的アプローチを用いて明らかにすることである.「正規雇用に就くことができるか」「獲得可能な賃金」の2点を達成の指標に分析を行ったところ,大学・短大中退者は中長期的にも正社員就業しづらいこと,同じ正社員経験のない者であっても卒業者に比べ賃金が低くなることが明らかになった.正社員になることのできない大学・短大中退者は,大学・短大卒業者に比べて賃金の面では不利であり,より条件の良い仕事は卒業者に取られてしまうのである.